高卒男性を過重労働でボロボロにした企業の罪 残業は月200時間以上で、手取りは20万円だった

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問題は長時間の過重労働だけではなかった。ユウトさんは先輩社員らによるいじめの標的にされたのだ。マイナス20度の冷凍庫に1時間以上閉じ込められたり、眼鏡を製氷機の中に隠されたり、腐ったアサリを顔面に押し付けられたり――。別の社員がミスをしたのに、なぜかユウトさんがアルミ製のトレーを頭にたたきつけられたこともあった。

「まるでおもちゃにされているようでした」。自分が狙い撃ちにされたのは、高卒で一番年下の新入社員が仕事のストレスのはけ口にされたからではないかと推測する。

結局2年が限界だった。会社を辞めた直接のきっかけは、例によって湯船で寝落ちしてしまい、3時間ほど遅刻したこと。びしょ濡れのまま出勤し、何時間も上司の後をついて回って謝ったが、その間ずっと無視され続けた。ようやく口を開いた上司から出てきたのが「誰、君? 給料泥棒くん?」という言葉だった。

それまでも辞めたいと訴えるたびに、引き留められてきたが、ようやく退職する決心がついた。

食料品の宅配ドライバーの仕事に再就職

しかし、共働きの両親には、短期間で会社を辞めたユウトさんのことが努力不足、我慢が足りないと映ったようだという。特に父親からは「水が冷たくて辞めたんだよな」と嫌味を言われたこともある。その父親に急き立てられるようにして再就職したのが、食料品の宅配ドライバーの仕事だった。

そこではさすがに前職のような長時間労働はなかった。ただ「太陽が出ている時間帯に帰れることに罪悪感がありましたし、なんだか社会から必要ない存在だといわれているように感じてしまいました」とユウトさん。それだけ、初めての職場で受けた“洗脳”が強烈だったのだろう。

一方で新しい職場は、ノルマが厳しかった。新規顧客の獲得や関連商品の販売といった数値目標が課され、全員の成績が事務所のホワイトボードに書き込まれた。

ユウトさんは成績の悪いほうではなかったが、契約が取れない日もある。そんな日は退勤しようとすると、上司から「ゼロってことはないよな」「当然、これから契約取ってくるんだろ」とプレッシャーをかけられた。

「配送は1軒あたり5分で済ませるように言われていました。そもそも営業するための時間なんて取れないのに、ノルマなんて無理なんですよ」

正社員としての採用だったが、2年ほどで辞めた。

いずれもまともとは言いがたい会社だったわけだが、ユウトさんの困難はむしろここから始まった。それ以降、正社員として働くことが怖くなったのだ。

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