「日雇いバイト」で食いつなぐ40代教員の生活困窮 月収十数万円、生活保護を受ける非常勤講師も

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「教師になろうと思ったのは高校時代です。体育の先生に憧れて、私も生徒ときちんと対話ができる、心の温かい教師になりたいと思いました」

今から20年以上前、そんな夢を抱いて教師を目指した村井さんだが、その後の道のりは苦難に満ちたものとなった。当時、教員採用試験の競争倍率が今とは比べ物にならないほど高く、特に高校の保健体育は倍率が数十倍となることも珍しくなかった。

村井さんは採用試験に合格できないまま、十年数年の日々を過ごすこととなった。その間は非正規教員として働いてきたが、常勤にありつけた年もあれば、非常勤しかありつけなかった年もあったという。

苦しい生活が続く中で、10年ほど前に村井さんは教員を辞め、民間企業の契約社員となった。だが、数年前からは再び学校で働くこととなった。生徒たちとの心温まる瞬間を思い出し、ふと「戻りたい」と思ったのだという。

生活保護を受ける非常勤講師も

村井さんは現在、3つの高校に勤務し、1日3~4コマの授業を受け持っている。担当する授業が連続していないため、いわゆる空き時間も発生するが、その間の報酬は一切発生しない。

週当たりの持ち時間は計19コマと、非常勤講師としては少ないほうではない。月換算だと76コマに上り、本来なら月収は20万円前後となるはずだ。それなのに、なぜ11~12万円にしかならないのか。持ち時間どおりに報酬が得られない理由を村井さんはこう説明する。

「通っている学校の中には、緊急の保護者会などで頻繁に授業がなくなる学校もあります。直前に時間割が変更されることも珍しくありません。定期考査や行事などで授業が消えることもあります」

加えて、夏休みはほぼ休業状態となり、生活は困窮を極めるという。幸い昨年度は常勤だったため、今はその貯えを切り崩しながら生活しているが、「このままでは近いうちに貯金も底をつく」と話す。

驚くかもしれないが、非常勤講師では生活が成り立たず、生活保護を受けている人もごく稀にいる。日頃は毅然とした姿で授業をしている教員が、実は社会的弱者として国の保護を受けていると聞いたら、子どもや保護者はどう思うだろうか。

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