日銀が現行の「金融緩和」維持でも市場の混乱なし 22年度物価見通しは目標2%上回る2.3%に修正
日本銀行は21日の金融政策決定会合で、現行の長短金利操作付き量的・質的金融緩和の維持を賛成多数で決めた。他の主要中央銀行がインフレ抑制のため金融引き締めに動き、24年ぶりの円安が物価を押し上げる中、緩和を続ける日銀の独自路線が際立っている。
新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)によると、2022年度の消費者物価(生鮮食品除くコアCPI)は前年度比2.3%上昇(従来は1.9%上昇)に上方修正され、日銀が目標とする2%を上回った。23、24年度も引き上げられたが、1%前半にとどまっている。先行きは当面、上振れリスクの方が大きいとしている。予想物価上昇率は、上昇しているに判断を上方修正した。
金融緩和維持でも為替は大きく円安に振れず
22年度の実質国内総生産(GDP)は同2.4%増(同2.9%増)に引き下げられ、当面は下振れリスクの方が大きいとしている。足元の景気判断は、新型コロナウイルスの影響が和らぐ下で持ち直しているに引き上げた。需給ギャップは22年度後半ごろにはプラスに転じるとみている。
為替変動や国際商品市況の動向により、物価には上振れ・下振れ双方のリスクがあると指摘した。為替は急激な変動が見られるとし、物価に及ぼす影響について十分注意して見ていく必要があるとした。
金融緩和策が現状維持となったことを受け、東京外国為替市場のドル・円相場はいったん円売り優勢となった。その後は円が買い戻され、1ドル=138円台前半を中心に上下する展開となった。
野村証券の美和卓チーフエコノミストは発表後の取材に「円安対応としての政策修正の確率は依然として極めて低い」と述べた。世論や政治家の間で円安は問題化しつつあるものの、岸田政権が何らかの政策対応を日銀に求めるような「機運は出ていない」と指摘した。
岡三証券の会田卓司チーフエコノミストは、参院選を経てマーケットが金融緩和の枠組み継続との考え方に傾いたことから「前回のように日銀を試すような市場の動きがなかった」と指摘。この意味で、政府・日銀は「マーケットとのコミュニケーションには成功していた」と述べた。