「数学嫌い」が見抜けない「平均値」の落とし穴 統計数字でだまされないための「3つの基本」

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平均という言葉にはどうしても「人並み」「合格ライン」といった印象が付きまといます。そして実際にそれと比較して何かを判断する人は多いはずです。しかし平均は決して人並みの数字ではないことも多いのです。

問題②このワナに気づきますか?【難易度:高】

さて、先のケースでは、「サンプルの取り方」という点でも複数の落とし穴に陥っています。お気づきになったでしょうか? これは難易度が高く、ビジネススクールに来ている学生でも気がつかない人のほうが多いです。

まず、「映画館に来た人に尋ねている」という点が問題です。世の中には映画館にまったく行かない人もかなりの比率でいるはずですが、このケースでは映画館に来た人に聞いていますから、当然ゼロという数値が出てきません。そこで平均値がかさ上げされているのです。街中や携帯電話番号でランダムに選んだサンプルに「月に何回映画館に行きますか」と聞いた結果とは異なるわけです。

さらに、この調査方法では、ヘビーユーザーに当たりやすいというワナも見逃しています。話をよりわかりやすくするために、より極端な例を考えてみましょう。

仮に映画館のユーザーが31人だけと考えてみます。1人目から30人目までは毎月1日、2日、……30日に習慣的に映画館に来るものとします。そして31人目は毎日(ここでは1カ月は30日として考えます)映画館に来ます。そうすると毎月1日から30日までの任意の日には必ず2人の観客がいることになります。そのうちの1人は毎日映画館に来る31人目の人です。
そして任意の日に来た2人の平均値をとると、(1+30)÷2=15.5回となってしまいます。要するに、現地に来た人にアンケートをとると、現地によく来る人の比率が実態よりも高くなり、そこでもかさ上げが起こるのです。
次ページ先ほどのアンケートは…
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