「82歳の講師」が教壇に立つ深刻すぎる教員不足 教員の自己犠牲で成り立つ公立学校は崩壊寸前
しかし、1991年の40人学級化を境に、学級編成標準の引き下げはほぼ凍結された。下図のように、児童減少による定数の自然減に対し、少人数学級化による改善増が縮小され、定数は減少に転じる。
1991年以降は少人数指導を行う自治体への加配(増員)という形で単年度予算しか計上されなくなった。当時、文科省財務課長だった前川喜平氏は「文科省は本音では少人数学級にしたかったのだが、財源が確保できず、次善策として少人数指導を進めた」と言う。
少人数学級化による定数改善の見通しがなくなった結果、少子化による将来的な教員余りをおそれる自治体は、正規教員を増やしにくい状況に陥った。さらに、加配予算を積極的に要求する自治体と、そうでない自治体との間に格差が生まれることになった。
自治体の教育財政基盤が脆弱化
そのうえ、同時期に進められた小泉内閣の「三位一体改革」が、自治体の教育財政基盤を脆弱化させた。それまで国と都道府県で2分の1ずつだった教員給与の国負担(義務教育費国庫負担)が3分の1に引き下げられたのだ。
今年から始まった小学校全学年35人学級化は、約40年ぶりの学級編成標準の引き下げとなった。しかしこの間、正規教員が絞られ続けた学校は、定数の枠を埋められないほどにまで疲弊している。
悪循環を断ち切るため、まずは膨らんだ教員の業務を削る必要がある。「ゆとりある教育を求め全国の教育条件を調べる会」の山﨑洋介氏は「教員1人当たりの児童・生徒数を減らし、担当する授業のコマ数に上限を設けるべきだ」と言う。そのためにも長期的な定数改善の方針を国が示すしかない。
あらゆる層の子どもを受け入れてきた公立学校は、教員の無償労働によって支えられてきた。しかし、もう限界だ。自己犠牲で成立していたシステムは崩壊寸前に来ている。
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