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「ポスト安倍」の国内政治に求められるものは何か 長期安定政権が助長した忖度の構造と人材難

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その長期安定政権は、外交分野で大きな足跡を残した。自ら「地球儀を俯瞰する外交」を掲げて海外歴訪を重ねることで、日本の首相の存在感を発揮した。TPP(環太平洋パートナップシップ)協定交渉に途中参加しながら、発効に至るまで交渉を牽引した。

また安全保障では、新たに発足させた日本版NSCとしての国家安全保障会議とその事務局の国家安全保障局を設置して官邸主導の政策形成の枠組みを作り上げた。

強い反対運動に直面しながらも、第1次政権からの宿願であった集団的自衛権の憲法解釈変更を閣議決定によって断行し、平和安全法制の制定によって、日米同盟を強固にしようとした。

不祥事を生んだ忖度の構造

そもそも安倍首相は、官房長官としての閣僚経験しかない「官邸政治家」である。そこで官邸に経産省出身の今井尚哉秘書官と、警察庁出身の杉田和博官房副長官を中心とする官邸主導の体制を作り上げ、各省をコントロールした。いずれも事務次官経験がなく、従来のように事務次官中心に各省を掌握するのではなく、官邸官僚が直接各省官僚を指揮する体制が作られた。

政策によっては、大臣も事務次官もなく、官邸中心で政策が推進されていった。これに内閣人事局を通じた官邸による各省幹部の人事選定がなされると、忖度の構造が徐々に生まれる。政権後半の不祥事は、おおむねこの忖度の構造から生じていったのである。

政権発足当初は万全であった与党と官邸のチームは、徐々に主要メンバーが退場していく。甘利明経済財政政策担当相の辞任、谷垣禎一幹事長の引退に続き、石破茂幹事長は党内野党として逼塞する。谷内正太郎・国家安全保障局長も、日ロ交渉に反対して退任する。

だが政権は新しい有力な人材によって新陳代謝を果たすことはできなかった。徐々に痩せ細る官邸主導にとどめを刺したのが、まさに「異次元」の衝撃であった新型コロナウイルス感染症である。

政権を安定させたが、新しい人材を確保できなかったことは、政権が有力な後継者を育てられてなかったことと同義である。その先に待っているのは、政権からの転落なのだが、なおかつ再生するとすれば、新しい人材を多数育成するしかない。安倍後の政治に求められるのはまさにこれである。

この記事は『週刊東洋経済』の連載「フォーカス政治」の執筆陣によるシリーズ4本目です。以下の記事も配信しています。
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(軽部 謙介 : 帝京大学教授・ジャーナリスト)
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(歳川 隆雄 : 『インサイドライン』編集長 )
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(山口 二郎 : 法政大学教授 )

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