参院選与党圧勝後、日本株が「勝負週」になる理由 日経平均株価は重要な上値を超えていけるか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

しかし一方で、投資家は「QT(量的引き締め)相場はこれから始まる」ということも知っている。

5月24日に出たNY連銀の報告書では、FRBの資産縮小見通しを「2025年半ばに2022年比で2兆5000億ドル縮小」としている。内訳は、この6月からは月475億ドル(国債300億ドル、住宅ローン担保証券<MBS>175億ドル)を縮小。これは3カ月ごとに増加し、9月からはアメリカ国債、MBSともに、2倍の950億ドルの縮小のようだ。

もし、この報告書が正しければ、資産縮小は2022年6月から2025年半ばまで約3年間続くことになる。この3年間の相場模様を、投資家はどう描いているのだろうか。

前回の2017年の資産縮小QT相場(2017年10月〜2019年7月)では、縮小は月100億ドルでスタートし、最終的には月500億ドルの縮小で、総額約6400億ドルの資産縮小となった。だが、スタートの2017年10月初日のNYダウ2万2557ドルは、結局、2019年9月末終了予定の(QTが2カ月前倒しになったこともあるが)7月31日のNYダウは2万6864ドル(30日には2万7198ドル)と上昇相場であった。

現在約9兆ドルに達しているFRBの資産規模は、2017年時点の資産に対して約2倍の規模に膨らんでいる。そのため、比較は難しいが、「QT相場=下落相場」ではないことは認識すべきだ。

現在のアメリカの局面は、一般的には金利上昇などが景気を冷やし、株価を押し下げる「逆金融相場」といわれる。そして次に来るのが「逆業績相場」といわれ、景気後退・業績低迷へと落ち込んでいく相場だ。

しかし、相場はそう単純ではない。長期の景気後退に陥ることは、世界各国の政権が許さない。政権が倒れるからだ。

ゼロコロナ政策で混迷を深めている中国でも、地方政府に日本円で30兆円規模の債券発行を許可する(30兆円の景気支援)との報道もすでにある。「逆金融相場の次は再び金融相場がやってくる」という強気派も、わずかだが存在する。

相場は、どんな長期の材料でもそれを織り込んでいく、壮大な「ウィズ相場」なのだ。すでに新型コロナウイルスを織り込んだ「ウィズコロナ相場」は走っており、「ウィズウクライナ相場」も終わりそうにない。

日経平均の勝負ポイントは2万7049円

さて、最後に一気に日本株の目先の話になるが、参議院選挙では与党が圧勝した。だが今後、もし日経平均株価が6月20日の2万5771円で底を打たずに割ってしまえば、夏のラリーも年末高もない。この6月20日の安値を「陰の極」にするためには、直近の高値である6月28日の2万7049円を抜かなければならない。

今週の予定を見ると、前出のアメリカCPI・PPI、中国4~6月期GDPなど、重要材料が満載だ。今週は勝負どころだ。もちろん、すぐには決まらないだろうが、安倍晋三元首相亡き後の、黒田日銀政策がどうなるのかも、下半期以降の市場では重要な注目点になる。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事