SNSで測定、記録的猛暑が日本の「緊張」を高める 日本の「空気感」を大きく変える出来事とは

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「緊張」や「混乱」と異なり、「怒り」指標は、大きく変動する機会が少なく、出来事などの影響を受けることが少ない。「怒り」指標は、週間の周期変動として、平日において高くなり、休日において低くなるという傾向が顕著であるが、中長期で見ると安定した推移を見せている。

日本人における「怒り」という感情は、何らかのニュースや事件では動きにくいようだ。「緊張」や「混乱」といった心理状態は、他者に大きく影響を与えるが、「怒り」は、個々人の内々で完結してしまい、周囲の人に伝染しにくい心理状態なのかもしれない。

前向きなメッセージが「活気」を呼び込む

「活気」の指標については、2015年から2019年末ぐらいまでは、ゆるやかに右肩上がりで高まってきた。国内景気が良かったことを受けて、「活気」の空気感は高まっていったと考えられる。

2015年以降で、短期的に「活気」が跳ねたタイミングが2回ある。1回目が2019年の7月だ。この時期に大きな出来事はなかったが、東京オリンピック1年前で、国内の空気感が、非常に前向きになっていたタイミングだった。この後、新型コロナの影響で、1年延期することになるが、2019年7月の時点では、日本の空気感は「活気」が高まっていた。

「活気」が高まったタイミングの2回目は2020年の6月だ。2020年の初頭から新型コロナが流行し、1回目の非常事態宣言が解除されたタイミングだ。その後、2回目、3回目の宣言が出ることは想像できていない状況で、感染症という国難を乗り越えたという安心感が「活気」の空気感を高めたと考えられる。

このように「活気」という空気感は、日本人が前向きになれる出来事があるタイミングで高まる傾向にある。東京オリンピック1年前の時も、新型コロナの緊急事態宣言の解除も、個々人に具体的なメリットがあったわけではない。“これから良くなるぞ”という前向きなメッセージが、活気の空気感を高めたと言えるだろう。一般生活者に対して、わかりやすいメッセージを発信することでも、空気感は変えられるのだ。

「日本の空気感指数」の動きを見ながら、空気感を大きく動かした出来事を振り返った。今後、空気感を変えたいと思った時に、今回の分析結果を、政策やマーケティング戦略の検討に役立ててもらいたい。

田村 光太郎 野村総合研究所データサイエンスラボ シニアアソシエイト

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たむら こうたろう / Koutaro Tamura

1988年生まれ。東京工業大学総合理工学研究科博士課程修了。博士(理学)。同大科学技術創成研究院特任助教を経て、2018年、野村総合研究所入社。データサイエンティスト、クオンツとしてさまざなま領域でのデータ解析に従事。専門分野は、複雑系物理学、経済社会データ解析、アルゴリズムなど。SNSデータを利用した「日本の空気感指数」の企画開発を担当する。主な著書に「学生・技術者のためのビッグデータ解析入門」。

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