あなたにも出来る!社労士合格体験記(第26回)--机に置かれた離婚届にただ呆然
離婚時の年金分割は、いわゆる「合意分割」と「3号分割」の2種類。どちらも厚生年金の制度ですので、国民年金には分割の制度はないことを、まず押さえてください。そして、離婚をしてから2年を経過すると、原則として分割の請求をすることができなくなるということも重要です。
「合意分割」と「3号分割」の違い
「合意分割」は2007年4月1日施行のため、それ以降の離婚に適用されます。分割対象期間は専業主婦として扶養されていた婚姻期間(いわゆる国民年金の第3号被保険者期間)であれば、もちろん施行前の期間でも構いません。
そして年金の受取額について、それぞれどのような配分にするかという「按分割合」について、夫婦間で合意しなければなりません。「按分割合」は最大で半分ですが、合意できれば半分より少なくても構いません。もし、合意できない場合は家庭裁判所に決定請求することになります。
一方、「3号分割」は1年遅れの08年4月1日の施行。離婚の前月までが分割対象となるため、5月1日以降の離婚に適用されます。「合意分割」と異なるのは、対象期間が施行日以降に限定されてしまう点です。そして合意とは関係なく、按分割合はすべて半分になるのでシンプルです。ですから、08年4月1日より前の期間を分割するときは、「合意分割」を併用することにならざるをえません。
試験では例外が問われる
専業主婦の年金額が改定されるということは、新たに被保険者期間が加算されるということです。この加算期間のことを、「合意分割」では「離婚時みなし被保険者期間」、「3号分割」では「被扶養配偶者みなし期間」と呼んでいます。ただし、あくまでも「みなし被保険者期間」ですから、通常の被保険者期間としては取り扱われません。でも試験では、例外的に反映される、次の2点がよく問われるので気をつけてください。
1点目は長期要件の遺族厚生年金です。たとえ自分の厚生年金被保険者期間がなくても、離婚によって「みなし被保険者期間」を有することになった者が、国民年金の受給資格期間を満たして死亡したら、遺族に長期要件の遺族厚生年金が支給されることがあります。
2点目は加給年金の支給停止要件です。加給年金は配偶者に240月(20年)以上の厚生年金被保険者期間があると支給停止されますが、この期間には「みなし被保険者期間」が含まれます。そのため、夫の加給年金から妻に振り替わる、国民年金の「振替加算」に影響が出てくるのです。つまり離婚したことにより、「みなし被保険者期間」も含めて240月以上となった場合は、振替加算はなくなります。
次回は、2度目の行政書士試験と妻の手術です。
【毎月第2・第4火曜日に掲載予定】
翠 洋(みす・ひろし)
1958年愛知県生まれ。国際基督教大学教養学部卒業後、ラジオたんぱ(現・ラジオNIKKEI)入社。番組制作、報道、出版事業などを経て45歳で退職。延べ1年半の失業期間の後、NHK「地球ラジオ」の専属ディレクターとして3年勤務。その間、ファイナンシャル・プランナー(AFP)に登録。2007年4度目の挑戦で「行政書士」合格後、行政書士法人で外国人の日本在留ビザ申請代行業務に従事。「社会保険労務士」には、2008年4度目の挑戦で合格。現在は、職業訓練講師として「人事労務基礎科」「基礎演習科」などを教えている。趣味はアルトサックス演奏、温泉巡り。「語学オタク」。
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