ドルは回避、多様化が止まらない世界の外貨準備 円も大幅安を機に新しいトレンドに入るのか

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この背景としては、①ドル覇権へ対抗する勢力(象徴的にはロシアや中国など)の存在、②デジタル通貨の開発・発行、③欧州復興債(NGEU債)の登場などが外貨準備運用の多様化を促す背景として指摘される。

①と②は密接に関連する論点であり、中国やユーロ圏、英国など中銀デジタル通貨(CBDC)の開発・発行を進めようとする動きはドル覇権への対抗という文脈で議論されることが多い。中国がデジタル人民元の実用化を急ぐ背景にはSWIFT遮断のような事態に備える意味があるとされ、ロシアを巻き込んだ決済網の構築を検討しているとも言われる。

円安効果だけなのか、円も手放されるのか

ちなみに円の比率は同じ20年余の間に6.03%から5.36%へ約0.7%ポイント低下している。この間にドルは比率を2.97ポイント(61.85%→58.88%)下げているが、ほかに比率を落としたのは円だけであり、非ドル化とともに円から他通貨へ振り向ける兆候も感じられる。

とりわけ、パンデミックが始まった2020年以降(厳密には2020年3月末から2022年3月末の2年間)、円は0.53%ポイント(5.89%→5.36%)下げている一方、その他通貨は0.98%ポイント(2.25%→3.23%)上げている。その動きは対照的だ。

ドルに関しては上述したような理由があるにしても、円に関してはなぜだろうか。やはり永遠の低金利通貨であることが嫌気され始めているのか。それとも盤石だった経常黒字の水準が徐々に、しかし確実に減り始めていることに危うさを覚えるリザーブプレーヤーが増え始めているのか。

もちろん、COFER上の比率はドル建てで換算されるため2021年以降、「円が積極的に手放されている」という数量要因よりも、「円安が顕著に進んでいる」という価格要因が大きい可能性もある。

しかし、リザーブプレーヤーがポートフォリオ構成(各通貨に割り当てられた比率)を不変にするのならば、価格要因でターゲット比率から大きく乖離した分は適宜リバランス(円買い・その他通貨売り)が入るはずだ。

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