ドルは回避、多様化が止まらない世界の外貨準備 円も大幅安を機に新しいトレンドに入るのか

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1~3月期に比率を落としたのは他にはユーロ(20.58%→20.06%、0.53%ポイント低下)と円(5.52%→5.36%、0.16%ポイント低下)だけであり、円は2期連続の低下(計0.32%ポイント)である。

円やユーロの比率が減少した分、それ以外の通貨の比率は上昇した。具体的には、ドルは0.02%ポイント上昇の58.88%、英ポンドは同0.17%ポイント上昇の4.97%、人民元は同0.08%ポイント上昇の2.88%、カナダドルは同0.08%ポイント上昇の2.46%、豪ドルは同0.09%ポイント上昇の1.93%、スイスフランは同0.05%ポイント上昇の0.23%、その他通貨は同0.19%ポイント上昇の3.23%である。

数字を見てわかるように、その他通貨の比率の上げ幅が大きい。現在公表対象ではない取引量の大きそうな通貨として考えられるのは、時勢を考慮すれば資源国通貨であろうか。とすれば、ブラジルレアル、メキシコペソ、ノルウェークローネ、スウェーデンクローナ、そしてロシアルーブルなどが考えられる。

ちなみに英ポンド比率、人民元比率、カナダドル比率、豪ドル比率はそれぞれ過去最高であった。年初からの動きに照らせば、利上げペースの速い英ポンド、経常黒字の積み上げが進む人民元そして資源高を背景とするカナダドルと豪ドルといった特徴が指摘できそうである。当然、カナダや豪ドルも順当に利上げを進める通貨だ。

ドルを手放して新興国・資源国通貨へ

過去20年余りの趨勢を見てみよう。1999年3月末から2022年3月末を比較すると、ドル比率は約71.2%から約58.9%へ約12.3%ポイント低下している。この間、ユーロ比率は約18.1%から約20.1%へ約2%ポイントしか増えておらず、ドルの受け皿にはなれていないことがわかる。

受け皿になっているのは人民元を筆頭とするその他通貨であり、約1.7%から約10.5%へ約8.8%ポイントも増えている。過去四半世紀の外貨準備運用のトレンドとして「ドルを手放して、新興・資源国通貨へ」という事実は鮮明である。

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