東海道新幹線「3つのカイゼン」で目指す将来の姿 速度向上だけでなく安全・安定・サービスも

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刃物を持った不審者を想定した東海道新幹線車内での訓練(撮影:尾形文繁)
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小さな改善の積み重ね。「カイゼン」はトヨタ自動車の成長の原動力だが、これはトヨタだけのお家芸ではない。JR東海は「磨きをかける」と表現して、新幹線の改善を続けている。

今年は東海道新幹線「のぞみ」が運行を開始してから30年に当たる。この間、さまざまな車両がのぞみ向けに投入された。2007年に登場したN700系は故葛西敬之名誉会長が「新幹線の完成形に達している」と絶賛した車両だ。しかし、「完成」ではなかった。JR東海はその後も開発を継続し、N700A、そして最新型のN700Sを生み出した。東京―新大阪間の所要時間は1992年には2時間30分だったが、N700系が登場した2007年には2時間25分、2020年には2時間21分になった。わずかな短縮の積み重ねが大きな時間短縮となる。

「磨き」は速度向上に限ったことではない。安全、安定運行、サービスという3つの「磨き」に関するJR東海の取り組みをルポする。

「刃物を持った不審者」想定し訓練

「なんつったコラア!」。満員の客を乗せた東海道新幹線の12号車で、坊主頭の男性が突然大声を出して立ち上がり、刃物を振り回した。

「キャアアアー」。そばに座っていた女性客の叫び声は、坊主頭の男性に負けず劣らず大きく、車内に緊張感が走る。

これはJR東海が6月13日の営業運転終了後の深夜、品川―新横浜間に列車を走行させて実施した不審者対応訓練の1コマ。2021年10月31日に京王線の特急電車内で発生した刺傷・放火事件を受けて実施された。この事件では最寄り駅で緊急停車した列車のドアとホームドアの位置がずれていたためドアもホームドアも開かず、乗客が窓からホームドアを乗り越えて避難する事態となった。

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