東海道新幹線「3つのカイゼン」で目指す将来の姿 速度向上だけでなく安全・安定・サービスも

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装置が稼働する様子を取材した。レールの代わりとなる軌条輪と車輪が接触して回転を始めると、ノズルから噴出した雪がみるみるうちに台車の周辺に付着した。

稼働中のブレーキ総合試験装置。ノズルから噴出した雪が台車の回りに付着していく(記者撮影)

JR東海総合技術本部技術開発部車両制御チームの佐藤賢司チームマネージャーは、「車輪が滑る状態を発生させて、それをできるだけ早く収束させるよう性能を高めることが目的」としたうえで、「地震などが発生した際のブレーキ距離の短縮を目指す」と話す。

ブレーキ総合試験装置と名付けられているものの、季節に関係なく着雪状態を作り出すことができるという部分がミソである。つまり、ブレーキ性能の向上だけでなく、雪対策にも有効なのだ。「着雪しにくい車両構造の検討や、雪落とし作業を機械化する開発にも取り組みたい」。いずれ、ここで培われた知見が新型車両に反映されるに違いない。

車内販売の「質」向上策

サービスについてもJR東海は「磨き」を重ねている。その取り組みは列車内でも見ることができる。

東海道新幹線の車内販売業務を行うジェイアール東海パッセンジャーズ(JRCP)の研修施設の様子(撮影:尾形文繁)

たとえば、東海道新幹線では6月20〜30日の期間、車内販売で商品を購入した乗客にアンケートを実施した。インターネット上で回答する方式で、回答者の年齢、性別、利用頻度、乗車目的などの属性を聞かれた後は、「車内販売は乗車してから何分後に来たか」「ワゴンを押す速度は適切か」「販売員と目が合ったか」「販売員に声をかけやすいか」「何を買ったか」「今後購入したい商品はあるか」といった質問が並ぶ。

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集まった回答を分析して改善を行えば、車内販売員の質の向上につながり、乗客も気持ちよく商品を購入できるようになる。

こうしたアンケートは過去にも実施しており、「以前アンケートを行った際に、お客様から車内販売限定商品があったらいいというお声があり、それをふまえ限定のグッズ販売など行ったことがある」と、JR東海の担当者は説明する。人気の車内販売限定グッズも元をたどればアンケートがきっかけだったわけだ。

速度、安全、安定、サービス。ほんの少しのカイゼンの積み重ねで新幹線が進化する。将来の新幹線ははたしてどのような姿になっているのだろうか。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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