農家にも広がる、「反アベノミクス」の波

せめぎ合い続く農業改革

しかし、3日に行われた自民党幹部との会談でも、萬歳章全中会長は改正案を受け入れず、議論は平行線に終わったとみられている。

自民党は6日もJA全中側との調整を続けており、週明けにも農協法改正案の骨格を固めたい考え。一方で、萬歳会長は5日に記者会見し、農協改革案について「検証を要する内容がたくさんある」と述べ、一般社団法人への移行に反対する姿勢をあらためて示した。

農家の反感、地方選の不安材料に

政府の「アベノミクス」圧力に反発を強めているのは、既得権限の消失や既存組織の混乱などを嫌うJA全中だけでない。一部の国内農家は日銀による異次元緩和などが引き金となった円安で輸入飼料価格が高騰し、収益低下の厳しい局面に立たされている。

「アベノミクスという、いわゆる国策が生み出した円安で、トヨタ自動車のような大企業はもうけやすくなったが、その裏返しが私達、酪農家だ」と愛知県豊田市で酪農を営む杉浦弘泰氏は話す。同県の酪農農業協同組合長も務める同氏は、飼料代が経営コストの8割にも達する今は「非常時」とし、「安倍首相には国策の裏側もみてほしい。農業の役割を考え、国として支えるべきは支えてほしいと全酪農家が思っている」と訴える。

日本の農業関係者に広がるアベノミクスへの反発は、すでに大きなうねりとなって安倍政権に跳ね返りつつある。今年1月の佐賀県知事選では、県農政協議会や漁協の推薦を受けた元総務官僚の山口祥義氏が、自民・公明の推薦を受けた樋渡啓祐氏を破って初当選。これまで選挙で自民党を支えてきた農政協は、今回山口氏側につき、徹底的な組織戦を展開、4万票という大差での勝利を実現した。

佐賀県知事選の与党敗北を受けて、金融市場では安倍政権の改革姿勢が後退するのではないかとの警戒感が拡大した。「農業改革は岩盤規制などがからむ改革の象徴的な分野。選挙対策のためにここが後退すれば、アベノミクスの改革全体が後退しかねない」とりそな銀行チーフ・エコノミストの黒瀬浩一氏は指摘する。

今年4月には4年に1度の統一地方選が予定されており、10道県の知事選など981の選挙が各地の自治体で実施される。その大きな争点としてアベノミクスの農業改革の是非が問われる可能性は大きく、安倍政権が新たな試練に立たされる懸念も否定できない。

 (大林優香、宮崎亜巳 編集:北松克朗)

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