ビジョンのない会社で働く人が持つべき「視点」 頼りない経営層の下でどのように動くべきか

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「中動態」的な意識で働いてみる

角田:加藤君が言うように、べつに自分の中からミッションが出てこなくてもいいんだよね。僕も若い頃は「個人>社会」で生きてきて、当然そうならないことが多々あってイライラしていたけれど、歳を重ねると「個人<社会」で生きるほうがじつは自分自身も結局楽しい、ということに気付きつつある。むしろ個人の快適さのほうを小さく考えて、会社や社会、世界みたいなものを快適にするんだ、と考えて生きるほうが、結果として自分も満足度が高いんだよね。

加藤:角田くんとしては「今は社会の快適さのほうが個人の快適さより大きい」とのことだけど、その快適さが重なる部分が落とし所になる、ということなのかな。

角田:若い頃は、ある意味で会社と個人が重なりすぎていたんだ。自分の快適さは「視聴率が取れた」とほぼ一致していた。それがフリーランスになったことで一度外れて、「これからは個人の快適さだけを求めればいいんだ」と思ってやってきたんだけど、ただの自己満足に虚しさを感じ始めている。自分の宇宙を満たそうとするだけでは、じつは満足できないんだ。

だからいま学校で教えたりしているのは、社会に改めて接続することに心地よさを感じているのかもしれないね。

それに、自分が変わることは「ぶれる」ことで、だから「ぶれない自分でいよう」と思っている人が多いけれど、僕は若い頃から、むしろぶれまくってるほうがいいと思っている。

加藤:その、自分ってもののあり方を……船に例えると、船自体には行きたい方向があるけれど、潮や波に左右されてピッタリとは動けないよね。海や川に流されることを許容しながら、自分の行きたい方向に行こうとして船を操っているイメージなのかな。

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角田:そうだね。波や流れのないところでひとりでこいでいるよりも、川や海に出て世界と接続された状態で、もちろんしけたりして大変なこともあるんだけど、その中で頑張って櫂をこいでいる、というほうが楽しいよね。

加藤:100%能動的でもないし、100%ただ流されるままというわけでもない。「中動態」的と言っていいのかもしれないな。

角田:「会社のミッションがない」と言うように、質問者の方は受動が強い意識になっていると思うから、もう少し能動性を持って「中動態」のような感じになったらいいのかもね。

「中動態」という言葉を有名にした、國分功一郎さんの『中動態の世界』は「『自分の意志でやる』でも『他人にやらされる』でもない、『自分の意志ではなくやる』中動態という動詞の形が昔のヨーロッパにはあったんだけれど、『責任主体』みたいな意識が強くなるにつれてどんどん消えていった」という話だと思う。同じように、「自分の意志で働く」でも「会社に働かされる」でもない、「世界の状況によって働く」感じを意識してみるのもいいかもしれないね。

本連載では大学生や、若手社会人の皆さんからお悩みを募集しています。仕事、就活、受験、生き方……などなど、角田氏と加藤氏に相談したいことをお書きください。応募はこちらからお願いいたします。また次回のあんちょこ配信は7月19日(火)20時から、こちらのYouTubeチャンネルにて開催です。
角田 陽一郎 バラエティプロデューサー/文化資源学研究者

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かくた よういちろう / Yoichiro Kakuta

バラエティプロデューサー/文化資源学研究者。東京大学文学部西洋史学科卒業後、1994年にTBSテレビ入社。「さんまのスーパーからくりTV」「中居正広の金曜日のスマたちへ」「EXILE魂」「オトナの!」など主にバラエティ番組の企画制作をしながら、2009年ネット動画配信会社goomoを設立。2016年にTBSを退社。映画『げんげ』監督、音楽フェスティバル開催、アプリ制作、舞台演出など多様なメディアビジネスをプロデュース。現在、東京大学大学院博士課程にて文化資源学を研究中。著書:小説『AP』『最速で身につく世界史/日本史』『なぜ僕らはこんなにも働くのだろうか』他多数。週刊プレイボーイにて映画対談連載中、メルマガDIVERSE配信中。

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加藤 昌治 作家/広告会社勤務

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かとう・まさはる / MASAHARU KATO

作家・広告会社勤務。千葉県立千葉高等学校卒。1994年大手広告会社入社。情報環境の改善を通じてクライアントのブランド価値を高めることをミッションとし、マーケティングとマネジメントの両面から課題解決を実現する情報戦略・企画の立案、実施を担当。著書に『考具』(CCCメディアハウス)、『発想法の使い方』(日経文庫)、『チームで考える「アイデア会議」考具応用編』(CCCメディアハウス)、『アイデアはどこからやってくるのか 考具基礎編』(CCCメディアハウス)などがある。

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