「幸せ」より「不幸軽減」を、ミスマッチを検証する指標作りが必要

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 一方、海外では幸福度を調査・測定し政策運営に反映する事例もある。南アジアのブータンはGDPより独自の「国民総幸福量」を政策実現への指標として掲げ、特に精神的な豊かさの向上を重視している。そのため、祈りや瞑想の回数を評価項目に採用しているほか、家族や友人とのつながり度を指標化している。

韓国でも70年代から研究が進められ、現在13分野487指標からなる「社会指標」を作成している。構成指標は平均寿命、学生の平均身長、主要都市のオゾン汚染度、障害者の義務雇用状況からインターネットショッピングの経験、映画の上映本数・観客数などまで多岐にわたる。

現状、幸福度指標の理論的考え方や統計的方法論は十分に確立されていない。が、「幸福の経済学」が生まれるなど、近年学問的にも急速に発展を遂げており、これを基にした実証研究も成果を上げている。内閣府の研究会の方向性はまだ見えないが、すでに幸福度指標を採用している多くの国と同様、「客観的指標と主観的幸福度指標の双方をうまく活用した」(政府関係者)形で指標のモデル作りが検討されていくものと思われる。

国内での幸福度への取り組みでは、地方自治体のほうが先行している。東京都荒川区では07年に「幸福実感都市あらかわ」のビジョンを掲げ、住民の幸福度を指標化する研究会を発足、11年度中に取りまとめる予定だ。大阪府柏原市でも市民の総幸福度を高めていくことを市の政策理念とし、ワーキンググループを設置した。このほか、福井県を中心に11県が共同で「ふるさと希望指数」の研究開発を進めている。

みずほ総合研究所の辻隆司・主任研究員は「生産者重視ではなく、これからは生活者の視点に立った指標が必要」と指摘する。その意味でも住民との距離が近い自治体の取り組みは、今後の国の政策や幸福度の活用研究にも大いに参考になろう。

さらに、企業経営にも同様な指標を導入する動きがある。かつては売り上げや利益など財務指標が企業評価の主軸であったが、近年ではESG(環境、社会性、企業統治)など非財務情報と合わせた経営目標を掲げる企業も増えてきた。その中には従業員満足度など主観的指標を盛り込むケースもある。

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