Netflixが巨額を投じた韓国コンテンツの裏事情 版権を放棄することで得た2つの大きな利点

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

1つめは、制作費への不安が解消されるからです。

それまで韓国ドラマや映画業界に共通する課題には、資金回収の見込みが立たないうちに、ドラマや映画の制作を始めていた点がありました。作品を作るときに必要なスポンサーなども制作前の段階ですべて決まることはなかなか難しく、制作中に決まることも多い。

Netflixの場合は、制作費を100%負担することも多いため、作り手は資金繰りを気にすることなく、作品作りに集中できる環境が得られます。そしてNetflixから提供される制作費は、従来とは比べものにならないほど大きいのです。ハリウッド作品に引けを取らないオリジナルコンテンツを作る企業だけのことはあります。

韓国コンテンツの制作側からすれば、2次、3次の収入が得られないデメリットはありますが、制作費に頭を抱えなくてもいい、とにかくいい作品を作ることに専念できる環境は作り手にとっては魅力的だと思います。特に世界から韓国コンテンツが人気を集めている今、作る側も相当のプレッシャーを感じることが多いため、何よりも制作環境を支援してもらえるというメリットは大きいでしょう。

Netflixというプラットフォームの存在

2つめの理由は、Netflixだとやはり世界各国の人々に同時進行で届けられることです。正直なところ、それまで1つの作品を海外に輸出する際には、それぞれの相手国の放送局などに営業や交渉をしなければなりませんでした。ときには、交渉がうまくいかずに契約が結ばれないこともあります。

ところがNetflixというプラットフォームを使えば、Netflixに作品がアップされるだけで世界中の人々に届けられます。しかも、それが同時進行で広がることにより、一気に世界中を熱狂させる作品も生まれるのです。

「イカゲーム」がその1つです。つまり、コンテンツを作る側からすれば、金銭面だけの話にとどまらず、自分が手掛けた作品が世界中に広がることこそうれしいものだと思います。

『コンテンツ・ボーダーレス』書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

このような2つの理由は、韓国がNetflixと手を組む大きな要因だったといえます。そして2021年の発表において、「Netflixは2016年から2020年まで韓国コンテンツに約7700億ウォン(約770億円)を投資し、多様な産業で約5兆6000億ウォンの経済的波及効果を創出した」と明らかにしました。また2021年2月には「2021年の1年間、Netflixが約5500億ウォン(約550億円)を韓国発のコンテンツに投資する」という発表があり、韓国コンテンツ投資への意欲を見せましたが、まさにNetflixと韓国コンテンツは今、ウィンウィンの関係をうまく構築しているといえます。

ちなみに、グローバル動画配信の時代にNetflixと共に、最近はApple TV+やDisney+なども韓国コンテンツへの投資に積極的に動き始めています。すでに何作品かは公開されたり、制作段階に入っているということですが、このようにグローバル動画配信サービスに韓国コンテンツは欠かせない存在になってきました。そして、ますますこれからこの流れは加速化していくのではないかと思います。

カン ハンナ 国際社会文化学者、タレント、歌人、株式会社Beauty Thinker CEO

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

Kang Hanna

淑明女子大学(経営・統計学)を卒業し、現在、横浜国立大学大学院都市イノベーション学府博士後期課程在学中(国際社会文化学・メディア学)。韓国でニュースキャスター、経済専門チャンネルMCやコラムニストなどを経て、2011年に来日。NHKEテレ「NHK短歌」にレギュラー出演しているほか、テレビ東京「未来世紀ジパング」、NewsPicks「THEUPDATE」「WEEKLY OCHIAI」にも出演するなど、多方面で活動中。2019年には、第一歌集『まだまだです』(KADOKAWA)を出版し、第21回「現代短歌新人賞」を受賞。韓国では日本文化に関する書籍を8冊ほど出版している。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事