Netflixが巨額を投じた韓国コンテンツの裏事情 版権を放棄することで得た2つの大きな利点

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また、国ごとのコンテンツ産業の政策や、各国に起きている最新トレンドなどについても定期的に発行されているのです。コンテンツを作る人からすれば、今世界にどのようなことが流行っているのか、今後はどのようなことが注目されるのかなど、自ら調査するのに時間や費用がかかる情報をKOCCAが提供してくれるのは、とてもありがたいことだと思います。

そもそもこのような専門情報へのアクセスは基本的に制限されることが多いかと思いますが、KOCCAが発行するすべてのレポートは「誰でも」「簡単に」「無料で」入手できるようにしたことが、コンテンツの成長を下支えしているのです。

Netflixが韓国コンテンツに巨額の投資

韓国コンテンツの世界規模のヒットの背景の1つが、Netflix。先ほど名前を上げたドラマも、Netflixの投資を受けて作られているものです。グローバルプラットフォームの競争激化により、Netflixはオリジナルコンテンツへの大規模な投資を行っています。

Netflixがオリジナルコンテンツを作り始めたのは2012年頃でした。今でこそ世界190カ国以上で利用できるNetflixですが、アジア市場への進出を考えたとき一番最初に目をつけたのが、日本のアニメと韓国のドラマでした。特に韓国ドラマの場合は、2000年代からアジア圏を中心に広がった韓流ファンが多かったため、Netflixからすれば韓国ドラマを確保することでアジア全体のユーザーを増やすことができるというのは大きなポイントでした。

そして2015年、Netflixはソウルに韓国支社を設立しました。ただし、設立したばかりの頃からすべてがスムーズにいったわけではありませんでした。なぜなら、それまでの韓国ドラマ・映画産業のやり方とNetflixのビジネスモデルには大きな違いがあったからです。

Netflixはハリウッドなどをもとにするアメリカンスタイルで、巨額の制作費を負担してオリジナルコンテンツを作ってもらいます。その半面、作品の権利はNetflix側が所有するというやり方なのです。

韓国側は最初、このようなやり方に戸惑いがあったと思います。なぜなら、それまでは自分たちが版権を持ち、世界各国に作品を輸出することで収益を得てきましたし、作品のシリーズ化、DVD、グッズなどを含め、2次、3次、4次の収益まで生み出すことができたからです。

しかしNetflixが版権を所有することになると、付加価値を生み出すことはもちろん、ビジネスの主導権を握るのもNetflixになるため、最初は不安や違和感を覚えたかと思います。

そうしたなか、韓国コンテンツとNetflixの間に転機が訪れたのは、2017年でした。映画「パラサイト 半地下の家族」の監督としても世界的に有名なポン・ジュノ監督が、Netflixから約5000万ドルという巨額の制作費の提供を受け、韓国初のNetflixオリジナル映画「オクジャ」を制作。ようやくここから、韓国コンテンツとNetflixの協業の道が開けたのです。

では、ポン・ジュノ監督をはじめ、2017年頃からなぜ韓国コンテンツはNetflixと手を組むようになったのでしょうか。その理由は大きく2つあると考えられます。

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