スルガ銀行、株主総会「抽選制」についた物言い 株主の出席可否をめぐり法廷闘争にまで発展

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27日にスルガ銀が出したリリースによれば、地裁が申し立てを却下した根拠は2つ。1つは経済産業省と法務省が2020年に公表した「株主総会運営に係るQ&A」が、コロナ禍を理由とする出席株主数の制限や事前登録制の採用を容認していることだ。

裁判所の判断には、スルガ銀固有の事情も絡んでいる。2021年のスルガ銀の株主総会において、株主が大声を出したり議長に詰め寄ったりしたことで、感染予防の観点から出席可能な株主を限定するという大義名分をスルガ銀に与えた。そして、事前登録の希望者が定員を超える場合は、株主間の公平を期す意味で抽選制はやむを得ないと判断した。

企業の対応は割れている

抽選制をめぐる企業の対応は割れている。5月25日に総会を開催したイオンは、感染予防を理由に会場に出席できる株主の定員を50人とし、希望者が定員を上回った場合は抽選を実施するとした。コロナ禍以前、同社の総会には2000人弱が来場していた。

反対に、バンダイナムコは6月20日に開催した総会について、2020年から導入していた抽選制を取りやめた。同社の総会も、コロナ禍以前は2000人超の株主が来場しており、混雑防止の観点から出席可能な株主数に定員を設けていた。

2022年も同様に抽選制を設ける予定だったが、例年とは異なり緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令されなかった。また、東京都が5月にイベント実施に関するガイドラインを策定したことから、ガイドラインに沿った感染拡大防止対策を行うことを前提に抽選制を取りやめた。「株主の安全を確保できれば、来場者数の制限をすることなく、自然体での開催が望ましい」(広報担当者)。

抽選制を含む事前登録制について、経産省の担当者は「制度を周知し、登録の機会をすべての株主に与え、不公平にならないこと」を挙げる。抽選制を採用する際には、抽選の公平性や株主提案の説明、質疑応答の機会の担保は、通常の総会よりも一層の配慮が求められる。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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