経済学者は「役に立たない職業」なのか

経済危機の予測に、ことごとく失敗してきた

理由の1つに、多くの経済学者たちが「効率的市場仮説」を得意気に宣伝したと受け止められていることが考えられる。資産価格の暴落を否定するような仮説だ。何が最善かはつねに市場が知っているという考えの下、彼らは一握りの下々の者(私も含め)が発した、株式や住宅の価格高騰に関する警告を無視した。

だが、この批判は不公平だ。病気をすべて予見できなくても、われわれは医者を責めない。同様に、ほとんどの経済学者は株式市場や失業率に関する統一的見解を形成することとは大きく懸け離れた課題に心血を注いでいる。われわれはそのことに感謝すべきだ。

新著『Trillion Dollar Economists』の中で米ブルッキングス研究所のライタン氏は、経済学者という職業が「米国および世界各国で数兆ドルの所得と富を生み出した」と主張する。規模の小さい分野であることを考えれば、かなりの貢献といえる。米国経済学会の会員数はわずか2万人だが、彼らが仮に2兆ドルの所得と富を作り出したとしたら、経済学者1人当たり約1億ドルの計算になる。

ライタン氏の著書で面白いのは、会社の経営や経済の舵取りについて、いくつものちょっとしたアイデアが詳細に記載されていることだ。それらのアイデアは最適価格形成やマーケティングのメカニズム、独占の規制、天然資源管理、公共財の供給、金融学といった分野のものだ。

イノベーションの効用

シーグフリード氏が編集した2010年の書籍『Better Living through Econom―ics』では、そのようなイノベーションの実世界における影響が強調されている。排出権取引や勤労所得控除、低い関税率、ウェルフェア・トゥー・ワーク(福祉から就業へ)プログラム、より効果的な金融政策、周波数帯域免許のオークション、輸送部門の規制緩和、受け入れ保留アルゴリズム(DAアルゴリズム)、独占禁止政策、全志願制の軍隊、デフォルトオプションの賢い利用による定年後のための貯蓄推進、などだ。

ライタン氏らの著作からは、経済学者たちが膨大かつ極めて重要な成果を生み出したとわかる。その特徴は、確実な証拠を提供するための真剣な努力だ。医者と同様に、彼らもまた人々の生活を発展させてきたのだ。

週刊東洋経済2015年2月7日号

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