現状の原油高は行き過ぎ。80~90ドルが適正水準《アフリカ・中東政情不安の影響/専門家に聞く》
--相対的に欧州の影響が大きいと。
従来から、テロ活動によって生産障害が激しいナイジェリアも欧州向けが多いし、リビアの原油も欧州向けが多い。北海油田自体も自然減衰で生産力が落ちており、欧州は相対的に打撃を受けやすくなっている。
08年はユーロ高の反動でドル安となり、ドル安だから原油高となった。そして、原油が高いから、米国の負担感が相対的に大きくなるからドル安ということで、ドル安と原油高のスパイラルが起こっていた。それが現状は、ユーロ安と原油高のスパイラルのような状況にある。欧州の債券安も同時に起こるようなことになれば、政策のハンドリングが難しくなるだろう。
--イランの軍艦がスエズ運河を通過して、イスラエルは挑発行為だと言っている。
やや挑発的な行動だろうが、イスラエルは非常に厳しい情勢に直面する可能性があるということで不安定さはある。反イスラエル的な政権がエジプトでもできる可能性もまだある。周りをアラブ諸国に囲まれているイスラエルとしては、手薄になっていたエジプト側の国境警備を増やす必要が出てくるだろう。(イスラム急進派の)ヒズボラに対して、イスラエルの方から先制攻撃を仕掛けるリスクも高まるだろうし、不安定化しやすくなる。
--中国など新興国の需要がどこまで原油高に影響しているのか。足元での新興国のインフレ懸念や金融引き締めの影響は。
基本的に、先進国の原油需要は増えない。むしろ減っていくだろう。一方で、新興国の原油需要は毎年、増加を続ける。具合が悪いのは、新興国の石油の値段は硬直的で、市場との連動が緩いこと。国際的な原油価格が上がったからといって、国内のガソリンや軽油の値段が十分上がりにくい現状があり、需要が減りにくい。世界的な供給が減る懸念が高まって価格が高騰しても、需要の抑制がされにくければ、価格がより上がりやすいバイアスが働く。これが若干、供給懸念のときにはリスクファクターになる。
一方で、価格が高騰したときの反作用も大きい。補助金などによる国内の石油価格の抑制もいつまでも続けることはできないし、結局は国際市況並みに価格を上げざるをえない。そうなると、エネルギー効率が先進国より悪いだけに、先進国以上の物価上昇圧力を感じざるをえず、不況圧力も高まる。
(聞き手:中村 稔 =東洋経済オンライン)
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