鋼材価格、1トン当たり「10万円以下」に戻らぬ事情 取引先からは強気の値上げ姿勢に不満の声も

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原材料の高騰にさらされる高炉は値上げ圧力を強める。写真はイメージ(写真:編集部撮影)

世界的な資源・エネルギーの価格上昇に円安も加わり、日本でもインフレ圧力が高まっている。日本銀行が6月10日に発表した2022年5月の企業物価指数は前年同月比で9.1%上昇。15カ月連続のプラスとなった。

企業としては川上のコストアップの転嫁が必須となる。原料高はいつまで続くのか。ここでは基本的な素材の1つ、鋼材について見てみよう。

「(国内は)2022年度上期について主原料分で2万円、副原料分で1万円の値上げを打ち出した」。そう語るのは、国内鉄鋼2位のJFEスチールを傘下に持つジェイ エフ イー ホールディングス(JFEHD)の寺畑雅史副社長だ。

JFEの2022年1~3月期の鋼材平均価格(単独ベース)は11万6700円で1年前から約5割引き上げてきた。この価格は国内外の平均値だが、2022年度上期に打ち出した3万円(主原料分と副原料分の合計)は2割前後の値上げになる。JFEは6月以降、さらに1万円、計4万円の値上げに取り組んでいる。

原料炭、鉄鉱石、副材料などどれも高値圏

鉄鋼の場合、主原料の一角である原料炭(石炭)は値上がりが甚だしい。

2021年の年初には1トン当たり130ドル前後だったものが、秋口には約400ドルの最高値(当時)を記録。若干調整したものの、2022年に入るとオーストラリアやカナダの悪天候で供給難が発生。さらにロシア・ウクライナ戦争の勃発で3月には一時650ドルを超えた。その後も500ドルを超える水準が続いている。

鉄を1トン造るのに原料炭はおよそ0.8~1トン、鉄鉱石は1.5~1.7トン必要とされる。調達価格は市況価格と一定程度は連動する。原料炭の調達価格が600ドル、現在の為替レートならば鋼材1トンを造るのに原料炭コストだけで7万円近くになる。

鉄鉱石は昨年後半に100ドルを割ったが、その後上昇して130~140ドルの高値圏にある(鋼材1トン当たり鉄鉱石のコストは約3万円)。さらにニッケルやモリブデンといった副原料、エネルギー代も加えれば、鋼材価格の大幅値上げは必須、というわけだ。

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