リスクシナリオはバーレーン、サウジへの飛び火、目的が経済的要求から政治・宗教へ変化《アフリカ・中東政情不安の影響/専門家に聞く》
国際通貨研究所
糠谷英輝・主任研究員
--短期間で燎原の火のように暴動が広がっています。政権打倒の動きはどこまで波及するのでしょうか。
高い失業率、産業の育成が進まない中で、人口は増え続け、常にリスクは抱えていた。そこへ食糧価格の高騰が起きて一気に不満が爆発した。しかし、ここへきて、動きは変質してきている。問題が経済的要求にとどまらなくなった。経済の問題の背後にあるのは独裁的な政治体制だ、という意識が高まり、フラストレーションの対象が政治に移った。
これまで、中東諸国は経済的に豊かなので、おカネを配ったり、食糧の1年間の無料配給を行うなどおカネで解決できると見られていた。しかし、おカネを出しても民衆が満足しない状況になってきている。
やはり最大の注目点は、バーレーンに政権打倒の動きが波及するかどうかだ。少数のスンナ派が多数のシーア派を抑圧し、宗派間で経済的な格差が大きいため、宗派間対立が激化する可能性がある。経済から、政治、宗教へと問題が変わってきている。
バーレーンの王制が揺らぐような事態になれば、スンナ派の盟主であるサウジアラビアに波及する可能性が高い。各地のシーア派を支援しているイランが乗り出してくる恐れもある。
いまはイランも足元でデモが起きており、それどころではないが、自国の内部が落ち着けば、かねてから自国の領土だと主張しているバーレーンに手を出してくる可能性がある。
米国は親米政権であるムバラク政権の崩壊をどうにもできず、途中で見放したので、米国はもはや頼りにならないと見られている。米軍第5艦隊の基地がバーレーンにあるが、どう動くかが難しい。2001年の9.11同時多発テロ以来、国民感情は反米的になっている。王制をサポートする姿勢を見せれば現地の反米感情が確定してしまう。