結局いつになる?宇都宮LRT「開業再延期」の理由 一部区間「完成は年明け」、2023年3月開業困難に

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だが、実際には工期短縮はできなかった。同課の担当者は、橋脚の建設に使う大型建設機械(杭打ち機)の調達難と建設作業員の不足が理由とする。作業員の不足については「各地で続いていた(2019年10月台風の)災害復旧などの影響があったのではないか」という。結果的に、工事は約3カ月の遅れをそのまま引きずることになった。

LRT整備課によると、その後も2022年内の完成に向けた検討は進めていたが、「桁の架設や電車線(架線)、軌道などを重複して作業するのは難しい」(同)ことが明らかとなり、工事完了は2023年の年明けになるとの見込みを示すに至った。

野高谷町交差点について、同地域を走るタクシー運転手の1人は「朝夕ともなれば信号で通勤の車がダーッと連なる」混みやすい場所という。同交差点付近の軌道を立体交差化するのも、前述の通り道路交通量の多さが理由だ。もともと混雑が発生しやすい場所と認識されていたはずで、交通規制による道路交通への影響予測や工程に見込み違いがあったことは否めないだろう。

ただ、昨年1月に開業の1年延期を発表した際は、概算事業費が当初の458億円から684億円(宇都宮市・芳賀町分の合算)へ200億円超も増えたことから批判を浴びたが、今回の工期延長に伴う工事費用の増加はない見込みという。

早期開業へ「あらゆる方法」検討

一方、工事費用が増えなくても、開業時期が延びれば運行を担う三セク「宇都宮ライトレール」の開業前費用は増えると予想される。同社は2015年に設立され、開業に向けて全国各地の路面電車に社員を出向させ、運転士を養成するなどの準備を進めている。

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開業予定時期を2022年3月から1年延期した際は、「開業前費用負担金」として宇都宮市と芳賀町が約5億円を支出。今回も開業が遅れれば同様の負担が発生する可能性があるが、市は現時点で「工事の遅れ」については発表しているものの、開業時期については具体的に示していないため「その点は何とも言えない」(LRT企画課)という。

年内に完成する区間の先行開業を求める声もある。LRT整備課の担当者はできるだけ早期の開業に向け、「関係機関と協力し、あらゆる方法について検討する」と説明する。

再び開業が先延ばしとなる見込みの宇都宮ライトレール。だが、車両は全17編成のうち14編成がすでに納入され、残る3編成も6月中に揃う予定で、開業に向けた動きは進み続けている。これまでの大幅な費用増などに対する批判も少なくない中、市民の信頼や期待を裏切らないためにも次こそは「予定通り」かつ早期の開業が望まれる。

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小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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