(第53回)労働人口が減るのに外国人に門を閉ざす愚

✎ 1〜 ✎ 52 ✎ 53 ✎ 54 ✎ 最新
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小


つまり日本は深刻な労働人口減少に直面するにもかかわらず、外国人労働者の受け入れが極端に少ないのである。どう考えても合理的な選択とは言えない。

労働力が減少する原因は少子化である。では、どうしたらよいのか? 

日本政府は「少子化対策」が必要として、出生率を高めようとしている。そのために担当大臣まで置いている。評判の悪い「子ども手当」も、ひょっとすると出生率引き上げが目的なのかもしれない。しかし、そんなことで出生率が簡単に上昇するはずがない。日本は、直面する最大の問題に対して、有効な対策を講じていないのだ。

労働力減少に対する適切な対策とは、外国から労働力を受け入れることである。それは世界標準になっている。イタリアやドイツでは、今後15年間に労働力人口が約5%減るが、その期間に現在と同数の外国人労働者が増えれば、埋め合わせができる。スイス、オーストラリア、アメリカなどでは、たぶん労働力が増えるだろう。

日本だけが外国人労働者に固く門を閉ざしている。これはまったく非合理な態度だ。

必要なのはTPPによるブロック化でなく人的交流

対外関係において日本が進もうとしている方向は、基本的に誤っている。

第1に、本来必要なのは新興国の人材の活用であるにもかかわらずそれをせず、日本企業が生産した製品を新興国の貧しい人々に売り込もうとしている。何度も述べたように、高所得国である日本が生産した製品を低所得国の消費者に売るのは、経済原則から見て正当化できない。このまま進めば、日本企業の利益はさらに縮小するだろう。

「FTAが経済開国を進める」と考えられているのも誤りだ。FTAは「自由貿易協定」と訳されるが、その実態は「自由化」ではなく「ブロック化」である。つまり域内諸国間で関税を引き下げ、非加盟国との間に関税障壁を作ろうとするものだ。日本企業の生産工場が新興国にある場合、日本で生産した部品を関税なしで工場に送ることができるから、生産コストは引き下げられる。それは関係企業の利益には寄与するだろう。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事