ロシア空軍が弱いのは米軍の30年前レベルだから 物量では勝るものの、精度や作戦が時代遅れ
誘導爆弾と並行して長距離巡航ミサイルの開発も進められ、アメリカはこれらの兵器を好んで使用するようになった(ミサイル1基当たり100万ドル超と効果なために使用は制限されるが)。イラクのサダム・フセイン大統領(当時)を罰する目的で始められたイラク戦争から、旧ユーゴスラビアでの空爆、そして2018年のシリア化学兵器施設に対する攻撃に至るまでの32年間で約2300発の巡航ミサイル「トマホーク」が使用された。
ロシア軍は、今回のウクライナ侵攻開始から85日間で、これとほぼ同じ数(5月23日時点で2275発)のミサイルを使用した。ロシアがウクライナの防空網を突破できない理由が、これらの(やはり高額な)長距離ミサイルに頼っているからなのかどうかは、まだわからない。
ロシア空軍は地上部隊の補佐役の意味合いが大きく、より大きな戦略目標に資する独自の存在というよりも、各ミッションにおいて現場司令官の支援を行う存在だ。ロシア軍には、戦場の外にある「戦略的」な標的──本部や軍事施設、工業施設、石油・発電関連施設や輸送網──を攻撃する爆撃部隊があるが、そのような標的を確実に破壊するために、大量に使える比較的低コストの兵器(アメリカの衛星誘導弾のようなもの)の開発を行ってこなかった。
遠くからミサイルを多用
ロシアはウクライナに複数のダムボムを投下し、数発のレーザー誘導弾を発射してきたが、戦場以外の場所を攻撃するのに使ってきたのは、多くがミサイルだ。ベラルーシとロシアの地上から発射されたのはいずれも、ミサイルシステム「イスカンデル」から発射された弾道ミサイルや巡航ミサイル(合わせて630発)だ。艦船や潜水艦から発射されてきたのは、巡航ミサイル「カリブル」(ロシア版トマホーク)。クリミア沿岸からは、一握りの標的に向けて地対艦ミサイル「オニキス」が発射された。
空からは、戦術戦闘機や中型・大型戦闘機が、Kh-22/32、Kh-55/555、Kh-59やKh-101など複数の空対地ミサイルをランダムに投下してきた。このほかに、極超音速ミサイルの「キンジャール」も12発発射した。
ウクライナ西部の標的を攻撃するには射程距離の問題があり、補給がうまくいかないために兵器を変更しなければならないこともあった。だが全体的に見れば、最大の問題はロシア軍があまり洗練されていないことだ。