日本で起こる「非伝統的日本人」への無意識な差別 吉野家の面接拒否は氷山の一角ではないか

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外国籍と判断した学生の就職説明会への参加を拒否したと、"当事者"からツイートされた吉野家(撮影:常盤 有未)

牛丼チェーンの「吉野家」が、ハーフの大学生を外国籍と判断し、就職説明会への参加を拒否したことが少し前に話題になった。この推測による判断は、学生が提出した経歴情報に基づくものだった。報道などによると、吉野家の採用担当者は、応募者が少なくとも「純粋な」日本人ではないことに気づき、吉野家で内定が取れても外国籍の方の就労ビザ取得は大変難しいため、予約はキャンセルさせていただく、と告げたという。

こうした思い込みは、応募者の外見が一般的な日本人のそれでない場合や、名前がめずらしかったり、カタカナ表記だったりする場合に起こる。多くの採用担当者にとってこうした事柄は、応募者が最も厳密な意味での純粋な日本人でないことを示すのに十分だろう。

“非伝統的”日本人にとってはめずらしくない体験

残念なことに、今回の事件は非伝統的、混合的ルーツを持つ多くの日本人にとってめずらしい出来事ではなく、それは、ダイバーシティ(多様性)を受け入れ、促進するという前提に反している。日本では最近、「ダイバーシティ」や「インクルージョン」といった言葉がよく使われているが、その本当の意味や、それを日本で実現するために必要な活動については、活発に議論されてはいないと感じている人たちもいる。

日系ブラジル人の宮ケ迫ナンシー理沙氏もその1人だ。非伝統的日本人の若者が安心して集まれる、エンカウンターキャンプのオーガナイザーだった現在40歳の宮ケ迫氏は、「日本では、ダイバーシティは単なるキャッチフレーズ」だと話す。

「その言葉が実現したときに生じる感情を、私は感じません。ダイバーシティとはみんな違うということですが、自分とまったく違う人と関係を持つというのはとても複雑なことです。日本で耳にするダイバーシティという言葉はリップサービスに過ぎず、人々はその複雑さをまったく理解していません」

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