ベネフィット・コーポレーション登場の意味とは 「意識の高い」株式会社を作る方法を考える

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産業財団が設立された時点が当該企業にとって決定的な瞬間となっているのは、当該時点で起業家が事業上の目標を達成し、資産を蓄積した時点だからである。起業家の次なる意図は遺産に向かうこととなり、そして産業財団は起業家が自らの名前のみならず彼らが抱いていた願望を保存し、永続させるための手段となる。

ジョン・ルイス・パートナーシップはそのような組織の1つである。ジョン・ルイス・パートナーシップは撤回不可能な「信託設定証書」の規定に基づいて統治されており、信託設定証書には、当該会社は永久に従業員の利益のために経営されなければならないと記載されている。

しかし、英国コモンローは財産権に対する譲渡制限に嫌悪的な立場をとっており、また信託の存続期間を当該信託が設定されたときに生存していた者が死亡してから21年間に制限している。

この事例は、現在の君主である女王エリザベス2世に関係している。したがって、エリザベス2世の葬儀の際に、英国はこの親愛なる君主の死去を悲しむだけでなく、ジョン・ルイス・パートナーシップという、英国の偉大な信託の終了が彼女の死去から21年後に訪れることを嘆くかもしれない。

そして、グーグルのセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジ、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグが引退し、死去した場合にはどうなるのだろうか。誰が会社の目的が維持されることを確保するのだろうか。

なぜ慈善事業の立ち上げは解決策にならないのか

このような問題に対してこれまで行われてきたことは、新しい形態の慈善事業を立ち上げることである。現在のところ、この新しい形態の慈善事業は、可能な限り多額の富を蓄積する一方で略奪に従事し、その後、自らの悪行に対する懺悔として慈善団体または財団の設立という形で寄付を行うものと特徴づけることができる。

このような形態の寄付は、カーネギー、メロン、ロックフェラー、ヴァンダービルトといった、過去の泥棒男爵たちの歴史を表している。

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