京浜東北線が「山手線の線路」を走った工事の全貌 浜松町駅ホーム拡幅、運休を極力避ける工夫も

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今回の工事はホームの拡幅が目的だが、線路の位置を切り換えた区間全体の長さは、ホームの横浜寄りから大門通りの架道橋を越えた東京側までの442mにおよぶ。ホームの幅を拡げたのは東京寄りの149mで、最大で3.6m拡幅。これにあわせてホーム部分の線路122mを最大2.3m横に移動した。

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移動した線路の長さがホーム拡幅部分の長さより短いのは、ホームの東京寄りから架道橋の一部にかけての73mについては前もって切り換え後の位置に新しい線路を敷いてあったためだ。架道橋より東京側の137mも同様で、ここに既存の線路を最大1.8m移動してつないだ。

これらの線路は2021年10月に敷設を開始。設置場所は従来の京浜東北線大船方面行き線路と東海道線上り線路の間で、「過去にさまざまな事情で何度も線路の移設などを行っており、その関係で空いていたスペース」(藤原課長)を生かした。大門通りの架道橋も、駅寄りの短い桁は工事に先立って線路切り換え後の位置に新設。いずれも事前の準備で工事当日の作業をなるべく少なくする工夫だ。

ホーム部分の線路移設は同時に最大約170人の作業員が従事。工事全体では計26台の「軌陸車」(線路上を走る重機)も投入したが、線路を横にずらしていく作業は基本的に人海戦術だ。空が白み始めた4時半過ぎには大半の部分でほぼ予定通りの位置に移設が済み、バラスト(線路の敷石)の整備などの作業が進む。4時47分、京浜東北線の大船行き始発電車はいつもと違う山手線外回りの3番ホームに滑り込み、「京浜東北線が山手線を走る」1日が始まった。

橋上駅舎は2026年度末完成予定

線路移設が終わっても、ホームの拡幅や架線の位置調整など22日は終日さまざまな作業が続く。工事は延べ1300人超の人員を投入して23日の未明に完了し、同日始発から京浜東北線の大船方面行きは広がった浜松町駅の4番線ホームに発着するようになった。

橋上駅舎と北口東西自由通路の完成予想パース(画像:JR東日本提供)

北口東西自由通路と橋上駅舎の完成は2026年度末の予定。今後は「(浜松町駅で)線路の切り換え工事はとくに予定していない」(藤原課長)といい、線路上で駅舎や通路の工事が進むことになる。橋上駅舎の完成後、高架下にある現在の北口改札は閉鎖され、同改札からホームに通じる階段を撤去した後にホームを約20m延伸する予定という。

渋谷や新宿の大規模再開発に比べれば目立たないが、浜松町もこれから大きな変化の時期を迎える。1970年の完成時は日本一の高さ152mを誇った世界貿易センタービルは今後解体され、跡地には高さ235mの超高層ビルが2027年に完成予定。東京モノレールの駅ビルも建て替えられ、新たなビルは2029年12月の竣工を目指している。また、5月23日にはJR東日本と野村不動産が、駅のやや南に位置する浜松町ビルディング(旧東芝ビルディング)を高さ235mのツインタワーに建て替える「芝浦プロジェクト」の計画詳細を発表した。今回のホーム拡幅と線路切り換え工事は、浜松町駅周辺が新たな姿に生まれ変わる序章といえそうだ。

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小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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