僕たちは「クソどうでもいい仕事」を根絶できる 哲学者が本気で「新しい国をつくる」仲間を募集

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トークンをブロックチェーン上で発行しているということは、つまり、すべての取引が透明化できているということです。言い換えれば、誰が誰にどれだけのお金を払ったかが改竄不可能なかたちで記録されることになります。アベノマスクをつくるために誰にどのぐらいお金を払っているのかも、誰でも簡単に確認できる仕組みになるわけです。

そうしたハートランドのプラットフォーム上で行われる取引に、自動で「税金」を設定することもできるので、「課税」にまつわるコストを社会全体で劇的に減らすことができるわけです。正直な話、現在行われているような行政手続きのほとんどはブロックチェーンで自動化できる(しかも純然たる透明性が確保されます!)ので、国家レベルでのDXという点でもハートランドは有効な試みといえるでしょう。

ハートランドの意思決定

ハートランドは、完全に民主的に運営されます。「民主的な運営」とは具体的にいって、どういったものなのかについては、専門家を巻き込みつつさらに議論が必要なところだと思います。

しかしたとえば、「国家」の根幹に関わる「憲法」について改変を加える場合には、「国民」全員を巻き込んだ議論を経て直接民主制で決めるべきでしょう。予算配分や調停など、専門的な知識と熟議が必要とされるようなものについては、あるいは抽選によって選ばれた市民に報酬を与えてじっくりと議論をする場を設ける必要があるかもしれません。

選挙によって国の代表を決める方法は貴族主義の名残を引き摺った妥協策のひとつで、本来の意味の「民主主義」は抽選制を採るものでした。抽選で選ばれた代表に意思決定を委ねることに抵抗はありうるでしょうが、「熟議」の方法を工夫することで合意可能なものを構築できる可能性はあるかと思います。

いずれにせよ、ハートランドを最初につくった人々も含めて、一部の人々に権限が委譲される仕組みを避け、完全に民主的に運営されることが目指されます。

ハートランドとDAOの関係

さきほど、企業DAOと生活DAOを説明しましたが、実は、DAOはいろいろな形態を取ることができます。いまの地方自治体、企業、地域コミュニティなどを含む、大きな意味での相互扶助組織だと思ってください。

企業のような生産活動をメインとするDAOで働いたり、農家が生産した野菜を購入したり、友人と一緒にプロジェクトをしたり、あるいは単に友だちづきあいとして交流したりする。

いま大事なのは、個人個人が、自分の好きな組織に参加することです。搾取のあるところからは離れて、気持ちよく働いたり生活したりできるところへ移動する。そのため、DAOの出入りはできる限り簡単にしたいと思っています。

それぞれのDAOで、どれだけ運営に参加するかも当人次第で、直接民主主義的な制度のもとで運営に深くかかわることも、あるいはコミットメントの低いDAOに参加することもできる。

最初に、ハートランドのなかに企業DAOや生活DAOがあると言いましたが、むしろハートランドがDAOのネットワークであるというほうが正しいかもしれません。搾取のないDAOがきちんと存在できるような枠組みとしてハートランドを構想しています。

なぜ「新しい国家」が必要なのか

以上が、私の構想する「新しい国家=ハートランド」の全体像です。いかがだったでしょうか?

こうした説明をすると、ほとんどの人が「こいつ、何を言っているんだ」という顔をします。いま読んでいるあなたもそうかもしれません。それほど、いまの社会の枠組みで生きることが「当たり前」になっているということですね。

しかし私は、いまの「国民国家・民主主義・市場経済」というシステムはもう限界にきていると考えています。「新たなしくみ」を本気で構想しないと、もう間に合わない。重要なのは「国家」をつくるのは本来、私たち自身であるべきだということ、私たちの考え方次第で変えていけると知ることです。

何度か確認しているように、ハートランドは見方を変えれば単なる共助団体ですので、近代国家のシステムを壊そうとするものではまったくありません。しかし、近代国家のシステムが人々に本当に必要とされるものかどうかを問うキッカケにはなるかもしれません。

そういったわけで皆さまにはぜひ「新しい国家」を一緒に作っていく作業に参加いただけないかと思います。それは可能であるだけでなく、未来の私たちにとって不可欠なことです。議論は開かれています。皆さまのご参加をお待ちしております。ぜひ、「ハートランド 公式ウェブサイト」をご覧ください。

後編:本当に「クソどうでもいい仕事」を根絶できるか

(構成:梅原進吾)

荒谷 大輔 江戸川大学基礎・教養教育センター教授

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あらや だいすけ / Daisuke Araya

専門は哲学・倫理学。1974年生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学。博士(文学)。主な著書に、『西田幾多郎』(講談社)、『「経済」の哲学』(せりか書房)、『ラカンの哲学』(講談社選書メチエ)、『資本主義に出口はあるか』(講談社現代新書)などがある。

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