われわれがまず認識すべきは、80年代の日米関係と現在の日中関係では、違う点もあるということだ。
中国は質的側面でやっと日本の10分の1になった
最大の違いは豊かさの差だ。80年代には、1人当たりGDPで日米間に大きな差はなかった(85年において、アメリカが1万7228ドルだったのに対して、日本は1万1448ドルだった)。ところが現在の日本の1人当たりGDPは、中国のそれのほぼ10倍ある。つまり日本は中国に比べて圧倒的に豊かな国なのである。
なぜ日本は中国に比べてそれほど豊かなのか? それは産業構造がまったく違うからだ。
日本は100年以上前に工業化に着手し、経済活動人口中の農林水産業従事者の比率は、2007年で2・7%にまで減少している。それに対して中国の工業化は、80年代の初めに始まったばかりだ。07年の農林水産業従事者の比率は、62・6%である。中国人の大部分は、いまだに農業社会に暮らしているのだ。こうした人々の一部が都会に出て、製造業やサービス業に従事するようになっているのである。
農業中心の経済が工業化する際には、成長率は高くなる。これは当たり前のことである。自動車販売台数で中国が2年連続して世界一になったのも当然だ。ついこの間まで、中国人は帆船や牛車で移動していた。都市での通勤は自転車だった。それが自動車に移行しつつあるのだから、売れるのは当然だ。
われわれは、この当然のことをしっかりと認識する必要がある。しかし、日本企業の多くは、中国の成長率の高さと量的な巨大さに幻惑されてしまっているようである。