『ヒア アフター(Hereafter)』--天災によるインフレ進行《宿輪純一のシネマ経済学》
本作品はクリント・イーストウッドの最新作である。彼は現在80歳(!)でますます活発な活動をしている。最近では『ダーティハリー』などといった俳優としての活動ではなく、監督としての活動のほうに力点を移している。
70歳を過ぎてから、アカデミー賞受賞作『ミリオンダラー・ベイビー』(2004)、『硫黄島からの手紙』(06)、『父親たちの星条旗』(06)、『チェンジリング』(08)、『グラン・トリノ』(08)、『インビクタス/負けざる者たち』(09)、そしてこの『ヒア アフター』(10)と充実した秀作が続く。
身長193センチのクリント・イーストウッドは、若い頃は遊んでいたようだが、歳をとるにつれ節制した生活を送り、身体も鍛えており、姿勢も極めてよい。とても80歳とは思えない。しかし、俳優としてのキャリアは『グラン・トリノ』で幕を下ろした。加えて、彼は音楽の才能もあり、自分が監督した映画はほとんど音楽も担当している。
今回の作品はさらにスティーブン・スピルバーグが製作総指揮を行っている。もともとの原案自体がスピルバーグから持ち込まれたものだ。イーストウッドは「内に秘めた展開」を好み、またスピルバーグは「素直な展開」を好む。その2人の色彩が混ざり合い、さらさらと2時間以上展開される。
まず『ヒアアフター(Hereafter)』という単語であるが「あの世(来世)」の意味である。死を身近で体験した3人の登場人物が悩み苦しみ、“死”と“生”と向き合う姿を描きながら、有限である日々の“生”の自覚、そして生きていることへの感謝、そして精いっぱい生きることの大切さを描く。
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フランス・パリで活躍するジャーナリストのマリーは、休暇を過ごす東南アジアで、津波の被害に遭う。大津波にのみ込まれて臨死体験をしたが、そのとき見た不思議な光景が忘れられず、その見たものは何かということを突き止めようとする。
イギリス・ロンドンで、母と双子の兄弟、ジェイソンとマーカスは暮らしていた。突然ジェイソンが交通事故で死亡。マーカスは悲しみのため立ち直れなくなる。兄ともう一度何としても話したい彼は霊能者を探す。