『ヒア アフター(Hereafter)』--天災によるインフレ進行《宿輪純一のシネマ経済学》
アメリカ・サンフランシスコで働くジョージ(マット・デイモン)は優秀な霊能者だったが、自分の“才能”を呪い、霊能者という仕事を辞める。心機一転、料理教室に通い始め、新しい彼女を見つける。しかし霊能者の才能のために別れることになる(マット・デイモンは最近『ボーン・アイデンティティー』や『グリーンゾーン』などアクション俳優としての出演が続き、そのようなイメージができつつあったが、今回は印象の違う役柄だ)。
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“死”と接したマリーとマーカス、と“死”とつなぐことができるジョージという3人は、“死”や“来世”というテーマで交わっていく。
“死”は突然にやってくることもある。本作品の中のように、大津波そして交通事故という“災害”に基づくことも多い。災害、特に自然災害(天災)は経済に与える影響も大きい。
現在、新興国は高インフレに悩んでいる。
その原因は、新興国の人口増加や先進国を中心としたマネーの流入、そして、天候不順などの「天災」を原因とする食料価格の上昇である。新興国は穀物をはじめとした食料を輸入していることも多く、インフレが進行する。
そのため新興国は一斉に金利を引き上げている。インフレを一因として「チュニジア政変」も、「エジプト騒乱」も発生している。エジプトは世界有数の小麦の輸入国である。ムバラク大統領はついに辞任に追い込まれた。このうねりは、体制に不安要素がある国に、さらに飛び火する可能性もないとはいえない。