ケンタッキー、"禁じ手バーガー"に潜む狙い 「ビストロ風ハンバーグサンド」開発秘話

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直営既存店客数の反転増が喫緊の課題だ(撮影:梅谷秀司)

これまでと同じことをしていては、客足は底ばいのまま。そんな思いを抱く近藤社長が、開発部隊から「ハンバーグで勝負したい」と懇願されたのは昨年春のこと。同年4月に社長に就任したばかりの近藤氏も、「今までのケンタッキーにない商品ができるなら、いいのではないか」と最初は思った。

しかし、社内からは「チキンを売りにしてきたケンタッキーが、なぜハンバーグを売るのか」という批判的な声が上がった。近藤社長も三菱商事から移籍してきたばかりで、そうした声に戸惑いも感じたという。それでも、「ケンタッキーに来たことのないお客さんを店に迎え入れたい」との思いが強かった近藤社長は昨年夏、開発陣にゴーサインを出した。

「開発期間の短縮」が課題だった

結果的に最初の構想から約1年で商品化にこぎ着けたわけだが、この“1年”という期間にも大きな意味がある。これまでケンタッキーが新商品の開発にかけてきた期間は、平均すると1年半程度。ロングセラーとなっている「レッドホットチキン」に至っては2年の歳月を要した。

いい商品を出すために時間をかけるのは大事なことだが、消費者のニーズが目まぐるしく変わる時代となり、開発期間の短縮はケンタッキーの課題だった。その点においても、今回の新サンドを1年で発売できたことは課題克服への第一歩ともいえる。

昨年9月からは、ケンタッキーとグループ会社の宅配ピザ専門店「ピザハット」の商品開発を近藤社長が直轄するようになった。意思決定の迅速化や開発スピードの向上が狙いで、「2015年以降は、より積極的に新商品を打ち出していく」(近藤社長)。

ケンタッキーの新たな商品戦略は、消費者にどのように受け止められるか。ハンバーグサンドの売れ行きが、今後も客数増の流れを継続していけるか否かの試金石となりそうだ。

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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