これがデジタル時代のポルノ雑誌だ! アートとエロの華麗な合わせ技

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ネット上で見られるポルノ画像には無料のものも多いというのに、これらの新しいタイプの成人誌には高値がつけられている。たいていは20ドル以上で、ものによっては1000ドル台や1万ドル台のものもある。

出版物の発行部数調査機関である「アライアンス・フォー・オーディティッド・メディア」によれば、かつては米国国内で600万部近くを売っていた『プレイボーイ』も、現在の発行部数は約100万部。最盛期には500万部近く売れていたペントハウスは10万部程度だ。

頭を使わせ想像力をかきたてる新しい成人誌

一方、新しいタイプに属する成人誌で最も発行部数が多いのはフランスの『リュイ』で、同国内だけで35万部が売れている。

読者数は比較的少ないものの、これらの新しい雑誌は成人向け娯楽産業のトレンドに影響を及ぼしていると、業界団体で業界誌も発行している「アダルトビデオ・ニュース」のテオ・サプーツィズ最高経営責任者(CEO)は言う。「あの手の雑誌は優雅なスタイルが売りだ」

「ポルノと、性を題材にした芸術との違いは照明にある」と、アダルト誌の創刊メンバーのひとりサラ・ニコル・プリケットは元ポルノ女優グロリア・レナードの言葉を引用して語った。

ネットポルノとも、『コスモポリタン』などの女性誌のセックス相談コーナーとも、スワイプするだけでセクシーな画像を次々と閲覧できる出会い系アプリ「グラインダー」や「ティンダー」とも違う雰囲気の雑誌を作りたい――プリケットともうひとりの創刊メンバーであるバークリー・プールはそう語った。

最近の号でいえば、異性愛者の男性が若さに任せて同性愛との関係に及んだという話や、新進写真家ジョン・エドモンズが手掛けた若い男性のヌード写真(被写体になったのはエドモンズの知人たちや、説得されて撮影に応じた見ず知らずの人々だという)が掲載されている。ちなみに同誌のセックスコラムニスト、チェルシー・サマーズは20歳代の若い女性ではない。50歳代だ。

印刷媒体には「人を立ち止まらせて写真を眺めさせ、考えさせる力がある」とプリケットは言う。「スワイプひとつで現れる写真は、その人が無意識のうちに抱いている美についての考え方を肯定するだけだ。だが印刷媒体の場合、読み手は何かが美しいということを納得させられる」

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