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第1次大戦はなぜ「死者1000万人」にもなったのか 総力戦の下、近代兵器が殺戮を可能にした

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多数の新兵器が投入された第1次世界大戦。総力戦によってそれまでの戦争と違い、死傷者の数が激増した。そして戦争は結果として社会や政治のあり方も変えていった。

独仏国境の西部戦線では塹壕戦となった。大戦ではさまざまな新兵器が投入された(写真:Roger-Viollet/アフロ)

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1914年6月、オーストリア帝国領のボスニアを視察中の帝国皇位継承者夫妻は、隣国セルビアから来たスラブ民族主義者に暗殺された。バルカン半島は複雑な民族構成のため争いが絶えず、「欧州の火薬庫」といわれていたが、とくにスラブ系民族のセルビアは、オーストリア国内のセルビア系民族との合体を要求して対立していた。

暗殺に抗議してオーストリアが同盟国ドイツの了解の下にセルビアへの軍事的懲罰行動に出ると、スラブ系民族の盟主を自任するロシアはセルビア支援のため総動員令を発令した。総動員令は事実上の宣戦布告であった。ドイツが対抗して総動員令を布告し、ロシアの同盟国フランスに侵攻すると、フランスを支持して英国も参戦した。

こうして、バルカン半島でのオーストリアとセルビアの地域戦争のはずが、瞬く間にヨーロッパ戦争に発展した。100年前のウィーン会議(1814〜15年)での列強は連携して大規模戦争を防止するとの合意は破られた。

さらに英国の海外自治領カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなども英国に軍を派遣した。14年8月、日本が日英同盟を根拠にドイツに宣戦し、ついには世界大戦に発展した。

19世紀の戦争観に基づく戦争

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