有料会員限定

実はナポレオン3世は「とても賢い皇帝」だった ナポレオンの甥、フランスの近代化を主導した

✎ 1〜 ✎ 4 ✎ 5 ✎ 6 ✎ 最新
拡大
縮小

「能力のない策謀家」と見られがちだったナポレオン3世。叔父の初代ナポレオンとは違った形で、フランスの栄光を実現しました。その人生は実に起伏に富んでいる。

ナポレオン3世(1808-1873)フランス皇帝「フランス最後の君主」。初代ナポレオンのおい。「愚帝」の評価は否定されており、19世紀フランス繁栄の立役者として見直されている(写真:Universal Images Group/アフロ)

フランス皇帝ナポレオン3世(ルイ=ナポレオン・ボナパルト)は、毀誉褒貶(ほうへん)の激しい君主の1人である。とりわけ同時代の作家、ヴィクトル・ユゴーによる辛辣な批評は大きな影響を与え、ナポレオン3世は能力のない陰謀家との評価が定着した。

しかし時とともに状況は変化し、政治家としての資質や政策が再評価の対象になり、その帝政を肯定的に解釈する傾向が強くなっていった。当時の経済成長は「フランス資本主義の黄金時代」と称されるようになり、それを支えた制度や政策が着目されるようになった。この研究潮流はとくに第2次世界大戦後に強くなった。

ルイ=ナポレオンは、大ナポレオンの帝国が崩壊すると、母親に連れられスイスへ亡命し、そこで多感な青年時代を過ごした。

1830年に母国で7月革命が勃発したのを機に政治活動を本格化。ナポレオン戦争後の欧州での秩序を支えていた、英国、オーストリア、プロイセン、ロシアなどの大国中心主義に立つウィーン体制(のちにブルボン復古王政下のフランスも加盟)を一貫して批判した。

この立場から、ドイツ、イタリア、ポーランドなどにおけるナショナリズム(国民主義)運動に共感を寄せ、イタリア統一運動(リソルジメント)にも参加した。

3世に込められた意味

次ページフランス史上最大級の植民地が実現
関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内