保育所の抜本改革こそ、待機児童解消策の原点だ
幼保一体化は、自公政権時代にも何度か議論されたものの、結局、実現しなかった経緯がある。
06年には幼・保を一体化した「認定こども園」制度が始まったが、二つの役所に書類を提出しなければならないなど二重行政の弊害がネックになり、ほとんど普及していない。
幼保一体化が難しいのは、幼稚園は文部科学省、保育所は厚生労働省と所管が分かれ、それぞれに既得権益を持つグループが存在するからだ。たとえば、保育所関連では、「保育三団体」と呼ばれる業界団体が存在し、厚労省の官僚が天下っている。自民党などの族議員も絡む。彼らは既得権益に守られた現状の維持を願い、株式会社の新規参入を増やすといった改革には後ろ向きだ。
認可保育所は現在、公立と社会福祉法人運営が大半を占め、株式会社などはごくわずかだ。認可保育所は、国と地方自治体から補助金を受けられるため、認可外保育所に比べて料金は安く、大都市圏では申し込み者が殺到する。
昨年10月、社会福祉法人の理事長も務める中村博彦・自民党参議院議員は、講演で「(社会福祉法人全体では)1兆円近い内部留保がある」と言及。関係者を慌てさせた。社会福祉法人は特別養護老人ホームなども手掛けているが、この内部留保の多くは補助金が原資ともいえる。
大都市圏では慢性的に認可保育所が不足しているのに、なかなか増えない。これは、新規参入が少ないことに加え、社会福祉法人に世襲が多く、内部留保を使った保育所増設に消極的な傾向が強いこともある。