CNNの「有料配信」始まったとたん葬られた理由 激化する競争、「CNN+」単独では商売にならない

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CNNプラスに急きょ終止符が打たれ、ネットフリックスが今後3カ月間でさらに200万人の加入者を失うとの予想を示す中、今後数年間におけるストリーミングサービスの収益性が疑問視されるようになっている。はたして、どれだけの人が複数のストリーミング・サービスに喜んでお金を払うのか——。

CNNプラスは、CNNのかつての親会社ワーナーメディアおよびCNN前社長ジェフ・ザッカーのアイデアとして始まった。ケーブルテレビの視聴者離れが続く中、大物ホストを起用したオールラウンド型のデジタル事業でCNNのテコ入れを図るもくろみだった。

経営統合に翻弄された運命

ところが、CNNプラスには強力な懐疑論者がいた。ディスカバリーCEO(最高経営責任者)のデビッド・ザスラフだ。ザスラフはワーナーメディアとの合併を完了させ、まさにCNNの経営を監督する立場に就こうとしているところだった。

ディスカバリーの経営陣は反トラスト(独占禁止)法上の制約から、合併手続きが完了するまでCNNへの助言を控えていた。CNNプラスは2月、ザッカーが同僚との恋愛関係を会社に報告していなかったことを理由に辞任すると、その後ろ盾を失った。それでも、ワーナーメディアCEOのジェイソン・キラーは計画を止めることなく、3月29日、CNNプラスのサービス開始に踏み切った。

しかし、ザスラフがまるで違うデジタル戦略を持っていることがたちまち明らかとなる。

4月11日、ディスカバリーへとオーナーが変わってから初めての営業日の朝、統合会社WBD株の取引がナスダックで開始される90分前に、ディスカバリーのストリーミング担当グローバル責任者、JBペレットはCNN幹部と会議を行った。

やりとりを知る3人の関係者によると、事業の正式な見直しが完了するまでCNNプラスのマーケティングは停止するとのメッセージがペレットから伝えられたという。

WBDの幹部は、同社が持つ動画配信プラットフォーム「ディスカバリープラス」と「HBOマックス」を1つの巨大なストリーミングサービスに統合したいと考えていた。CNNプラスのようなニッチなビジネスが、単独で成り立つとは考えていなかったわけだ。

負債の問題もあった。ディスカバリーは今回の合併で、WBDとして約550億ドルの負債を背負い込むことになった。WBD経営陣に負債返済のプレッシャーがのしかかる中、2人の消息筋によると、CNNはCNNプラスに今後4年で10億ドル以上を費やし、賃料のかさむマンハッタンの高層ビルに借りているフロアを、さらにもう1階分追加することさえ計画していた。

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