CNNの「有料配信」始まったとたん葬られた理由 激化する競争、「CNN+」単独では商売にならない
3月最後の月曜日の夕暮れ時。マンハッタンのミッドタウンにある高層ビルの101階には、CNNのスターたちが同局のストリーミング事業「CNN+(プラス)」の船出を祝うイベントに集まっていた。CNNプラスは、同ネットワークをデジタル時代に導くものと位置づけられていた。
CNNプラスで映画を監督したイーサン・ホークが同局の看板キャスター、アンダーソン・クーパーや、著名ジャーナリストのカール・バーンスタインらと歓談する中、ゲストらはミニサイズのロブスターロールをつまみつつ、ニューヨークの美しいスカイラインに目を奪われていた。
だが、その3週間後、彼らはCNNの新しいオーナーによって下界に引き戻されることになる。
サブスク市場が迎えた不穏な転機
4月21日、CNNプラスを4月いっぱいで打ち切りにするというワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)の突然の発表に、メディア界とテック業界には衝撃が走った。「極めて困難な決断だが、CNNの長期的な成功のためには適切なものだ」。CNNの次期社長クリス・リヒトはスタッフにこう語った。
全国的なマーケティングキャンペーン、数百人規模の新規採用、有名キャスターとの大型契約など、CNNが何千万ドルという大金をつぎ込んできたストリーミング事業にとって、今回の打ち切りは不名誉な幕引きとなった。
その2日前には、ネットフリックスが四半期ベースで加入者数が10年ぶりに減少したと発表したばかり。競争が激化し続けるストリーミング市場に参入する大手メディアにとって、今回の件は潜在的な警鐘になるものといえる。