デジタル化で大失敗する担当者が知らない重大事 IT業界の見積書にありがちな「一式」の怖い意味

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まずは、IT業界における見積書の見方をお伝えしていきましょう。

開発内容に関係なく、基本的には詳細項目に要件定義、設計、実装(構築)、テストといった、どんな作業が発生するかの内容が記載されます。

要件定義:どういう機能が必要か、どんな人達が利用するか、今の業務の不満や不安は何かなどをヒアリングし、顧客が作りたいシステムの要望をまとめる
設計:作りたいシステムの要望から実際にどれくらい時間がかかるか、どんな開発言語を使うかを検討し、機能や仕様を決定する
実装・構築:設計に沿って、それぞれの工程で作り上げていく
テスト:作られたシステムが、顧客の要望通りに動くかを確認する

これらの作業で、1カ月に何人が拘束されるかを示す「人月」、あるいは何人が1日拘束されるかを示す「人日」が数量として示され、その単価が設定されて項目ごとの金額が設定されるという流れです。すべての金額が合計された総額が見積もり金額となります。

各項目の見方は、次のとおりです。

詳細:実施する作業に合わせて小項目が並ぶ
数量:単位は「人月」や「人日」などが基本で、たとえばWebページ制作の場合は「ページ」という表記に。セキュリティなどの外部へ委託する試験などがある場合には「一式」となるケースも
単価:各作業内容に合わせて、単価が設定される。人月ならいくら、人日ならいくらという設定。基本的には、大企業に依頼すると単価が高くなり、個人事業主などの個人でやっている人は安い傾向が。この差は、システム開発では予期せぬトラブルが起こることがままあり、小規模の会社は単価が安い代わり人員のバックアップ体制がほぼないため。それがスケジュールの遅延を発生させることも。大企業は人数も多いため、予期せぬ出来事があってもバックアップ体制が整っている。それゆえ作業者が変わっても予定通り進むことが基本的には可能。大企業のほうが単価が高い傾向にあるのは、不慮の事態に対しての保証料金も単価に組み込まれていると考えていい

では見積もりの各項目を、どこに注意して見たらいいのでしょうか。

「一式」と大きく書かれた見積もりは除外

「◯◯開発費用」という詳細の項目に数量「一式」で総額のみが掲載された見積書を提出してくるケースがあります。長く付き合いがあってお互いにどんなことがあるかわかっている関係にあるわけでもないのに、こういった見積書を出す会社は経験上NGです。なぜなら作業がスケジュールどおり行かない場合に、何にどれくらい時間を見積っているかが全くわからず、後にトラブルとなるケースがあるからです。

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