名古屋駅の地下深くへ、進む「リニア駅」巨大工事 駅前「超一等地」の用地買収、すでに9割取得済み

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新線建設に伴う用地買収の経験はJR東海にはない。そのため、名古屋駅周辺の用地買収交渉を名古屋まちづくり公社に委託。ノウハウに長けた県や市の職員が同公社に派遣され、地主との交渉にあたった。

しかし、大型ビルの地主とは交渉が難航した。通常の用地交渉では地主は自分で移転先を探すが、駅前の大型ビルの地主が現状と同レベルの好立地を見つけるのは容易でない。

工事の概要を説明するJR東海中央新幹線建設部の関戸淳二担当部長(記者撮影)

そのため、関戸部長も自ら交渉に出向き、地主の話をじっくりと聞き、解決策をいっしょに考えた。関戸部長は土木などの技術部門が長く、用地交渉は初めての経験。「勉強しながら交渉しました」と振り返る。

用地交渉には市が一肌脱いだ。市内の小中学校の統廃合により2010年3月に廃校となった市立新明小学校の跡地が東工区に隣接していた。この敷地の西側半分を東工区に土地と建物を保有し、移転先を探していた三菱倉庫、太陽生命保険など3社に売却したのだ。

「決して楽な工程ではない」

名古屋駅では2014年に準備工事がスタート。2016年から中央東、中央西の両工区において本格的に工事が始まった。東工区の更地化に着手したのは2015年。五洋建設・みらい建設工業のJVと2021年1月に契約締結し、2021年8月に着工した。「4〜5年程度で更地化を完了しようということを目標に進めてきたが、ここまでくるのに7年かかった」と関戸部長が話す。

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工事は2025年8月の完成を目指すが、「決して楽な工程ではない」(関戸部長)。用地取得がすべて完了しているわけではこともあり、当初想定したものよりも工期が厳しいものとなっているのだ。「工期をできるだけ短縮するため知恵を出しながら努力をしていく」という。

今回の工事が完了した後のスケジュールは未定だが、拙速のあまり事故が起きるという愚は絶対に避けなければいけない。静岡工区で着工のメドが立たないという現実を踏まえれば、他工区ではスケジュールに余裕を持たせて、今以上に安全対策を強化したうえで今後の工事に臨むという選択肢もあってよいだろう。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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