吉野家の常務解任騒動「プロ経営者」3つのリスク コンプライアンス教育も大事だがここも外せない

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外部から招聘されたプロ経営者が権力を掌握するために「どう既存幹部をマウントするか」が戦術的なカギとなります。その手段の1つとなるのが既存の文化の否定です。

「これまでの経営は科学的ではなかった」

「利益が出るという尺度で見ることが何よりも重要だ」

とプロ経営者が発言すると、なんとなくそれが正しいように思えてきます。

本当は、

「数字でみることが科学的なのか、それとも現場が肌で感じた事実のほうが科学的なのか」

「利益を越えた長期的な信頼の方が重要な局面もある。今はどちらなのか」

マウントされた側は平伏してしまうことも

といった視点が重要でも、マウントされた側はそれに気づかずに平伏してしまうことがあるのです。

ここからは一般論ですが、最大の問題は、どんな企業であっても危険なプロ経営者を招き入れてしまうことで、ここで挙げた3つの問題が顧客と株主に波及していくことです。会社の文化を壊し、社員力をないがしろにし、なによりも商品についてのリスペクトに欠けた経営者をトップの座に招き入れてしまうのは、長期的に株式を保有している株主から見れば失策です。それで万が一にも味や価格などが大きく変わるようなことがあれば長年利用している顧客にとっても悪夢でしょう。

一部のプロ経営者から見れば業績は科学であり数字でしかないかもしれませんが、顧客から見れば商品は人生そのものかもしれません。従業員にとってもそうです。

「そんなものをなぜ引き入れてしまったのか?」

吉野家は全社をあげてコンプライアンス教育に力を入れると表明していますが、それよりも経営を誰にどう任せるかということに関した反省会に力を入れてほしいと、50年来の吉野家ファンとしては切に願います。

鈴木 貴博 経済評論家、百年コンサルティング代表

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すずき たかひろ / Takahiro Suzuki

東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)を経て2003年に独立。人材企業やIT企業の戦略コンサルティングの傍ら、経済評論家として活躍。人工知能が経済に与える影響についての論客としても知られる。著書に日本経済予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』(PHP)、『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』(講談社)、『戦略思考トレーニングシリーズ』(日経文庫)などがある。BS朝日『モノシリスト』準レギュラーなどテレビ出演も多い。オスカープロモーション所属。

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