インドネシアの石炭会社バヤン・リソーシズのロー・タック・クォン最高経営責任者(CEO)は数年前、同社の一部株式売却を試みたが妥当な買い手を見つけられず、逆に株式を買い増す賭けに出た。
対ロシア制裁の影響で石炭需給が一段とひっ迫
この賭けは成功。株価は以降、大きく上昇し、ブルームバーグ・ビリオネア指数によるとクォン氏は石炭業界有数の富豪となった。同氏が持つバヤンの61%株は現在、61億ドル(約7800億円)に相当する。
同氏は今年3月には1億9900万株を追加取得。同月のインタビューで「保有する株式の一部が売れないのなら、もっと買えばいい。非常にシンプルなことだ」と述べた。
地球温暖化に影響する二酸化炭素(CO2)排出に重い責任を持つ石炭業界だが、最近は予期せぬ発展を遂げている。英グラスゴーで昨年開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では、40を超える国・地域が石炭火力からクリーンエネルギーへのシフトに賛同したが、石炭火力は依然として世界の電源構成の約35%を占め、インドネシアではこの2倍。一方、世界的な経済活動再開でエネルギー需要が高まっていたところにロシアがウクライナに侵攻し、対ロシア制裁の影響で石炭需給が逼迫(ひっぱく)、価格が一段と上昇している。