内部資料が示すマッキンゼー「あきれた利益相反」 製薬企業と規制当局を同時コンサルという驚き

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FDAは2011年、オピオイドのようなリスクの高い製品に関する製薬会社の安全性監視プランを監督する部署へのアドバイザーとしてマッキンゼーを採用した。スミスはこのプロジェクトに関与する一方で、オキシコンチンが当局の要件を満たすことを示そうとしていたパーデューにも助言を行っていた。

スミスは2016年、医薬品の安全性追跡のためのデータ利用についてFDAにアドバイスを行ったが、このときマッキンゼーの同僚らはFDAに対するコンサルティングを利用してパーデューを支援する方法についてスミスに相談を持ち掛けている。

マッキンゼーは、2017年11月に当時大統領トランプがアメリカの保健行政の最高責任者に指名したアザールとの関係強化も図っている。内部記録によると、マッキンゼーが2018年と2019年に製薬会社へのコンサルティング業務で得た報酬は少なくとも4億ドルに上った。

マッキンゼーの広報担当者は、同社がアザールの閣僚就任に何らかの役割を果たしたという「認識はない」と述べた。

マッキンゼーのコンサルタント陣は、保健福祉長官就任の承認手続きを控えたアザールに対し、彼が直面するとみられる主要な問題をまとめた詳細なメモの作成に取りかかっていた。その中には、深刻なオピオイド危機が続いていることを率直に伝える一節もあった。

しかし、この記述はパーデュー担当のコンサルタント、アーナブ・ガタックが異議を唱えたことから削除された。

内部文書が裏付ける「証拠隠し」

内部文書によると、パーデューの訴訟問題が深刻化する中、同社案件を監督していたマッキンゼーのパートナーらは、裁判所から提出を命じられる可能性のある資料を減らす取り組みに着手したようだ。

2018年8月下旬、オピオイド製品の販売手法をめぐってパーデューがマサチューセッツ州とニューヨーク州から訴えられると、パーデュー案件を共同で率いていたシニアパートナーのマーティン・エリングは、「ラップトップから古いパー(デュー)文書を削除すること」というメールを自分宛に書き送った。

エリングとガタックは、2人がマッキンゼーのパーデュー案件関連文書の破棄を協議していたとニューヨーク・タイムズが2020年に報じた後、解雇されている。マッキンゼーは2021年2月、オピオイドメーカーの販売を「ターボがかかったように加速させる」手助けをしたことに対する州の調査に決着をつけるため、不正を認めないまま約6億ドルを支払うことに同意した。エリングもガタックも、メールや電話によるコメントの求めに応じなかった。

(執筆:Chris Hamby記者、Walt Bogdanich記者、Michael Forsythe記者、Jennifer Valentino-DeVries記者)
(C)2022 The New York Times

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