内部資料が示すマッキンゼー「あきれた利益相反」 製薬企業と規制当局を同時コンサルという驚き

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与党民主党が作成した委員会報告書によると、マッキンゼーでは2010年以降、少なくとも22人のコンサルタントがパーデューとFDAの両方を担当し、中には双方の案件を同時に掛け持ちしていた者もいた。マッキンゼーは委員会に対し、連邦政府の契約規則で義務づけられている利益相反に関する情報開示を行ったという証拠を提示していない。利益相反のおそれがある場合にそうした情報を開示しないのは、連邦規則に対する「明白な違反」だと同報告書は述べている。

パーデューは、ドナルド・トランプ政権で保健福祉長官に就任することが決まっていたアレックス・アザール2世のために2018年に作成したメモも含め、政府関係者や当局者向けに一連の資料を作成したが、マッキンゼー従業員はその作成についてもアドバイスを行っていた。内部文書によると、メモの草案にはオピオイド危機の深刻さに関する記述が含まれていたが、アザールに送られる前に削除された。

社内規定と矛盾する「言い訳」

マッキンゼーは、相反する利益を持つクライアントと機密情報を共有したり業務内容について話し合ったりすることをコンサルタントに禁じているとする一方、広報担当者は声明で、FDA案件に関しマッキンゼーに利益相反の開示義務があったとする委員会の主張に異議を唱えた。

「マッキンゼーはFDAに対し特定の規制決定や特定の医薬品に関する助言は行っていない。従って、製薬会社に対するコンサルティングとFDAに対するコンサルティングとの間に利益相反は生じない。利益相反が存在しないのだから開示義務もなかった」と、この広報担当者は述べている。

今年シニアパートナーに昇進したスミスには電話やメールでコメントを求めたが、返答は得られなかった。

政府機関業務の利益相反についてマッキンゼーが連邦規則に基づいて作成した社内ガイドラインは、たとえ利益相反がなかったとしても「そうした印象を持たれかねない場合」には、政府案件の契約担当者に報告するよう義務づけている。

FDAは声明で、潜在的利益相反の評価と報告は委託業者に任せていると述べた。

パーデューを担当したマッキンゼーのコンサルタントがスタッフとして関わったFDAのプロジェクトは37件に上っていたことが下院委員会によって確認されているが、追加の内部文書は、スミスを含むマッキンゼーのコンサルタントが担当したFDA案件はさらに広範囲に及んでいたことを示している。

スミスは2007年から2019年にかけて40を超えるFDA案件に関与。その一方で、少なくとも6件のパーデュー案件に関わっていた。

こうしたFDA案件のいくつかは、同時期にパーデューに対して行っていた案件と直接関連するものだった。

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