密かに進む、新幹線「神奈川県新駅」の実現可能性 地域で40年以上の運動、リニア開業は追い風か

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この県道410号線は、倉見地区のやや南側で圏央道の寒川北ICとも接続し、圏央道を介して東名や新東名などの高速道路ともつながる。

大神地区には、西方面行きと東方面行きのバスが発着する「トランジットセンター」が設けられる計画もあり、鉄道・バス・道路の計画が完成すれば、ツインシティエリアは県央における一大交通ハブになりうる。

このように平塚側と道路などの整備が進む一方で、新駅が誘致される予定の寒川側のまちづくりは、「地域の方々と勉強会を開いてまちづくりの理解を深めていただいている状況」(寒川町拠点づくり部)と、ようやくスタート地点に立ったばかりだ。なぜ、足並みの不揃いが生じているのか。

ある地元の関係者は、「市街化調整区域を市街化区域に区分変更し、更地からまちづくりを進める大神と、すでに宅地化も進んでいる倉見では事情が異なる上に、さまざまなステークホルダーの思惑がからみあっている」と事情を説明し、「合意を得るためには、たとえばメタバース(コンピューターで構築する仮想空間)を用いてトライアル的にまちづくりを行うなど、一目瞭然な計画に基づきシミュレーションできるような思い切った仕掛けが必要かもしれない」と、合意形成の難しさを語る。

「誘致に高いハードル」具体的には?

その上で、「懸念されるのは、駅設置やまちづくりにかかる巨額の財政負担であり、国の協力が不可欠だ。計画の全容をきちんと描き、何が不足しているかが明確になれば、ロビー活動などを通じて国への働きかけも進めやすくなるが、新駅誘致のハードルは高く、実現可能性は現状において五分五分と見ている」と打ち明ける。

では、新駅誘致実現に向けて、具体的にはどのようなハードルがあるのか。倉見の場合、以下の2点が大きな課題である。

2021年9月に開業100周年を迎え、11月には新型車・E131系が投入されたJR相模線。単線ゆえに輸送パイプが細いのがネックだ(筆者撮影)

1つは、接続路線となるJR相模線の輸送パイプの細さだ。相模原市(橋本駅南側地下)に駅が設置される予定のリニア中央新幹線と東海道新幹線はJR相模線を介しての乗り換えが想定されているが、相模線は単線であり、日中の列車本数は平均1時間3本、茅ケ崎駅―橋本駅間の所要時間は平均63~67分かかる。

このダイヤのままでは、リニア中央新幹線と東海道新幹線の乗り換えが不便であるだけでなく、倉見新駅の潜在的利用者の一部は、新横浜駅や小田原駅利用に流れる可能性が高く、輸送改善が必要だ。

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