密かに進む、新幹線「神奈川県新駅」の実現可能性 地域で40年以上の運動、リニア開業は追い風か

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神奈川県内の東海道新幹線新駅誘致に向けた取り組みは歴史が長く、東海道新幹線が開業した1964年の11年後、1975年には早くも相模川西岸の3市(平塚、伊勢原、厚木)による新駅誘致を目的とした協議会が設立されている。

また1991年には相模川東岸の9市町(茅ヶ崎、寒川、海老名等)による協議会が設立され、相模川西岸と東岸で綱引き状態となった。その後1996年、両協議会が1本化され神奈川県東海道新幹線新駅設置促進期成同盟会(以下、新駅設置促進同盟会)が発足し、1997年、寒川町倉見地区に新駅誘致地区が決定された。

当初は可能性が低いとみられていた、この倉見新駅(筆者による仮称)誘致計画に実現の芽が出てきたのは、前述したリニア中央新幹線との兼ね合いによる。JR東海は、神奈川県鉄道輸送力増強促進会議における新駅設置要望に対し、「現時点において、新駅の設置は極めて困難」としながらも、「リニア中央新幹線が開業し、東海道新幹線のダイヤ構成に余裕が生まれれば、新駅設置の余地が高まると考えている」と、リニア中央新幹線の開通を前提に、新駅設置に含みを持たせた回答をしている。

平塚側と周辺道路の整備は進む

倉見新駅誘致および周辺のまちづくり計画の具体的内容を見ると、JR相模線の倉見駅の東側に新幹線新駅を設置し、新駅周辺のまちづくりを進めるとともに、相模川を挟んだ対岸の平塚市大神地区の開発も行い、両地区を橋(仮称ツインシティ橋)で結ぶという「ツインシティ」が計画されている。また、新駅への交通アクセスとして、相鉄いずみ野線の湘南台―倉見間延伸構想もある。

東海道新幹線倉見新駅を中心とするツインシティ計画(画像:神奈川県東海道新幹線新駅設置促進期成同盟会)

このツインシティ計画の現在の進捗状況を見ると、平塚市側の大神地区では2015年から土地区画整理事業に着手しており、物流系企業や商業施設などの誘致が進められている。現地に足を運ぶと、すでに建設中のものも含め巨大な物流倉庫が建ち並んでおり、街の核となる商業施設(イオンモール)も、2023年春の開業を目指して建設が始まっている。

平塚市大神地区では、すでにまちづくりがかなり進んでいる(筆者撮影)

大神地区での計画が進んでいることから、周辺道路整備も待ったなしで進めなければならない状況にある。道路整備に関しては県が本腰を入れており、「ツインシティ橋を含む新駅誘致予定地区周辺の骨格道路を、藤沢市の湘南台から平塚市の大神地区に至る県道410号線の一部としてすでに道路認定しており、今後、整備を進めていく」(神奈川県県土整備局)という。

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