インドは中国と並ぶ大国になれるのか? ハーバード大学教授 ジョセフ・S・ナイ


 中国国民の91%は識字能力があり、43%が都市に住んでいる。だが、インドの識字率は61%で、都市居住者は29%にすぎない。毎年インドでは、エンジニアリングやコンピュータを専攻する大学卒業生が米国の2倍生まれる。しかし、英『エコノミスト』誌によると、「ソフトウエア会社で働く能力を持つ卒業生は4・2%にすぎず、6カ月の訓練を施した後でも、17・8%しかITサービス会社で働ける水準に達しない」。

これはインドの大学のレベルが低いためである。09年のアジア大学ランキングによれば、インドでトップのインド工科大学でさえアジアでは30位だ。中国と香港の10大学は同大学よりも高い順位にある。また総輸出に占めるハイテク製品の輸出比率は、インドの5%に対し、中国は30%に上る。

よって、インドが今後10年から20年で、中国に匹敵する大国になる可能性は薄い。中印両国は国境紛争の平和的解決を約束する協定を93年と96年に締結しているが、インドの国防大臣は98年3月の核実験を行う直前に、中国をインドの“潜在敵国ナンバーワン”と表現した。最近では、国境紛争も過熱している。

インドは公式な場では冷静を装っているが、本音では依然として中国を警戒している。インドは中国の同盟国になるよりはむしろ、中国の台頭を抑制するアジア諸国の一つになる可能性のほうが大きいだろう。

Joseph S. Nye, Jr.
1937年生まれ。64年、ハーバード大学大学院博士課程修了。政治学博士。カーター政権国務次官代理、クリントン政権国防次官補を歴任。ハーバード大学ケネディ行政大学院学長などを経て、現在同大学特別功労教授。『ソフト・パワー』など著書多数。

(週刊東洋経済2011年2月5日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。


写真撮影:日本雑誌協会代表(小学館)

 

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