台湾鉄道が「名物列車の置き換え」を急いだ事情 課題の「民営化」へ車種整理でシンプル化図る

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復興号は1980年代、台湾の経済成長による移動需要の拡大に合わせて登場した客車列車だ。当時進み始めた高速バスの冷房化に対抗するための冷房客車としてデビュー。初期は別の優等列車「莒光号」(急行に相当)と併結する「莒興号」として運行し、塗装もオレンジのボディーに白線を追加した莒光号に類似するものだったが、1981年末から復興号として単独運行を開始、それから4年後に水色の塗装となった。

冷房客車としては莒光号や「観光号」(廃止)が以前から存在したものの、それらに比べ車両当たりの座席数が多く、運賃も安価なことから好評を得た。しかし、速さや設備で優る「自強号」(特急に相当)の拡充や客車の莒光号への転用などにより置き換えが進んだ。

莒光号は2020年に登場50周年、観光号は2021年に60周年を迎えた。莒光号の客車には記念のヘッドカバーが付けられた(筆者撮影)

近年は東部幹線での運行が中心となり活躍の幅を狭めていたものの、復興号の客車は多客期の増発列車や南部経由で東西を結ぶ南迴線の区間車(各駅停車)などで活躍したほか、災害で道路が不通となった際の臨時運行や徴兵で入隊する兵士の輸送、中国大陸からの団体ツアー客の移動までも担い、「必要があれば駆けつける」といわれた機動力で鉄路の安定を支えてきた。

低運賃で利用者からは好評

実際に利用者からは、「低運賃で学生時代は帰省の際に重宝した列車」「通勤の際、リクライニングもできて快適な車両だった」といった声が聞かれ、長距離、短距離の移動にかかわらず民衆の思い入れの深さがうかがえた。

とくに、復興号として最後まで残った日曜日のみ運転の691次列車は、東部の花蓮を出ると台北の松山駅まで約2時間半で直行し、自強号と30分程度しか変わらない所要時間ながら、運賃はその6割で「乗り得列車」として親しまれてきた。

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